2007年10月

2007年10月15日

もっとよく知りたいビタミンE その2

肝臓で、4種類のビタミンEのうち、αタイプが優先的に肝臓の外から
出る仕組みになっていると書きました。

では、ほかの3種類はどういう運命をたどるのでしょうか?

基本的には、肝臓の酵素により分解されてしまいます。
分解した後は、尿となり、体外へ放出される運命となります。

αタイプも利用されなかった分は、また肝臓に戻され、
尿へ排出されるという運命となります。

そのため、食品の抗酸化などでは、α以外のビタミンEが強いため、
抗酸化剤として利用されていましたが、
体内でビタミンEとして働くにはαタイプでないと
肝臓から全身の血液系に送られにくいため、
せっかく摂っても意味がないのではないかと考えられていました。

ただ、ここ最近注目を浴びているのがγタイプのビタミンEです。

このビタミンEは、肝臓で酸化されたあとも利尿作用をもつ
ナトリウムを排出するホルモンであることがわかってきました。

つまり、塩分濃度が高い食品をとったときに
このγタイプのビタミンE酸化体が利尿を促し、
ナトリウム濃度が高くなりすぎないように調整します。

これはαタイプのビタミンEにはない作用で、γタイプのビタミンEは
酸化されて腎臓から排出されるまえに一仕事やっていくというイメージでしょうか。


shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 抗酸化ビタミン 

2007年10月14日

もっとよく知りたいビタミンE その1

ビタミンEは、ビタミンCと同じくらい一般によく知れ渡っているビタミン。

以前の記事にも書きましたが、ビタミンEにはα、β、γ、σの4種類あります。

ただ、一番強調されるのは、αビタミンEです。
食事の栄養摂取基準にも記載されるのは、αタイプのみ。

これは、人間の体内で利用する際に、αタイプのみが優先的に
取り込まれる仕組みになっているからです。

ビタミンEを含む食事を摂ると、小腸よりビタミンEは吸収されます。
このとき、4種類のビタミンEは同じくらい吸収されていきます。

その後、キロミクロンという、脂質を運ぶトラックのようなものに乗って
リンパ管から脂肪組織や筋肉などに送られつつ、血管へ入ります。

血管にはいると酵素によりキロミクロンレムナントへ変化し、
肝臓に取り込まれていきます。

そして、一番重要なのが、肝臓から全身のあらゆる組織へと送られる過程です。

肝臓に入ったビタミンEはαトコフェロール輸送たんぱく質によって
低密度リポタンパク質(VLDL)に引き渡され、
このVLDLが色んな所へ運んでいきます。

ビタミンEの活性は、αタイプを100とすると、βは40、
γは10、σは1。

このビタミンEとしての活性は、面白いことにαトコフェロール輸送たんぱく質と
α、β、γ、σのそれぞれのビタミンEとの親和性と同じだということ。

つまり、食事で摂ったビタミンEは吸収し、肝臓に運ばれた後、
全身の血管系へ送られるときに、選別されαタイプのみ優先的に送りだされるわけです。

他のビタミンEも肝臓から出て行きますが、輸送タンパク質との親和性が
よくなく、σタイプは100分の1の量しか、肝臓からでていきません。

そのため、栄養基準ではαタイプのビタミンEのみ栄養評価されているわけです。

shin_chanz at 10:46|PermalinkComments(0) 抗酸化ビタミン 

2007年10月11日

脂肪吸引事故

美容外科のなかで切る手術で回数が多いものなら、
一重瞼を二重にするのが一番なんでしょうね。

その他脂肪吸引も一定の市民権がありそうです。

脂肪吸引も金に糸目をつけないマダムには手軽に痩せる手段として
人気でしたが、確か10数年前でしたでしょうか、事故が相次ぎました。

女性週刊誌には、脂肪だけではなくて、血管や神経まで吸引されて・・と
恐ろしい記事が掲載されましたので、覚えている方も多いかもしれません。
死亡事故も起こっています。

もともと脂肪吸引というのは、1921年にフランスで始められました。
キュレットという器具で脂肪をかきだします。
(キュレットは歯科で歯石をかき出すときに使う器具を思い浮かべてください)

脂肪のかきとりは当時も人気のようでしたが、悲劇が起こりました。
誤って動脈を傷つけてしまい、下肢を切断する事故が起ったのです。
それ以来脂肪吸かきとりは危険なものと認識され、誰もやらなくなったのです。

それからずいぶん時間が経って、日本でも脂肪吸引が行われるようになりました。
ただ、脂肪吸引といっても出血はかなり起こります。

脂肪を作る細胞に血管を通して栄養分が送り込まれている以上、
脂肪を取ると毛細血管も無事ではないので、出血が起こるのです。

だいたい、取った脂肪の1/4〜1/3くらいの量まで出血が起こります。
それゆえ脂肪吸引もかなり熟練した技術をもった医者でないと、
結果に差がついてしまいます。
また、困ったことに脂肪吸引というのは、医者にも相当な負担を与えます。
手作業ゆえに腕が疲れてしまうのです。

それゆえ外国のメーカーでは、脂肪組織を壊して効率よく脂肪を吸引できる
装置の開発に熱心なのですが、その中で技術が不要で脂肪を簡単に吸引できると
誤った宣伝を行った装置がありました。

それが、日本で起こった脂肪吸引事故の悲劇の原因となりました。
脂肪吸引が商売になると飛びついた技量の無い美容整形外科医によって、
脂肪以外の組織も吸引され、悲惨な事故が多発したのです。

最近は小顔ブームで顔の脂肪吸引を望む人が多いようなのですが、
案外と顔に脂肪組織というのは多くありません。
顔の輪郭は丸みを帯びているため脂肪が多くあるように見えるのですが、
脂肪を取ってしまうとたいていの方は何歳も老けたような顔になります。

理由は脂肪組織というのは、肌の内側から皮膚を押し上げているものです。
それを取るということは、皮膚が落ち込むため、大きなシワが形成されてしまいます。

問題はへたくそな医者が顔の脂肪吸引を行うと、脂肪組織を除去しすぎ、
顔の筋肉と皮膚の癒着が起こってしまうことです。

だいたいそういう医者に限って、あわててヒアルロン酸注射を行って
すぐにはわからないよう偽装するらしいのですが、脂肪吸引後数ヶ月して
びっくりするような大きなシワが形成し、何歳も老けてしまった顔になると
後悔しても取り返しがつきません。

再度、技量のある医者に治療を受けて皮膚と筋肉の癒着を
解消する必要がでてきます。

なお、この脂肪吸引ですが、リン脂質を脂肪融解剤として注射することも
海外で流行り出しています。

脂肪吸引ほどの効果はありませんが、手軽なのが、受けているんでしょうね。


shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(2) 美容外科 

2007年10月10日

ブームなのかな。切らない手術。

しわ治療のボトックスやヒアルロン酸、痩身剤の注入など、
切らない手術、メソセラピー(注入療法)がずいぶん前から
ブームとなっています。

しみとりのレーザーはだいぶメジャーになりましたし、
ボトックス(筋肉を麻痺させる食中毒菌の毒素)では飽き足らない方に
ロシアで発明された糸を顔に通して、顔を引き上げる治療法もあります。

やはり、肌を切ると、しばらくの間腫れるので人前に出れない時間が
出来てしまいます。これが嫌がられているのでしょうか。

最近は、大学病院で美容整形に参入するところが増えてきました。
ただ、問題はその費用は決して安くないという点です。
なぜかお分かりですか?

たとえば簡単な二重まぶたにする手術でさえ、一般の病気や怪我の
治療に使う手術室を使用する必要があります。

いくら簡単な手術でも診察室で行うわけにはいかず、
大学病院の手術室を数時間使用するため、割高な費用が発生します。

全額自己負担が原則の美容外科手術では、一般の美容外科の方が
手術コストは安くなるため、どうしても大学病院の方が高くなります。

ただ、美容外科というのは、失敗することも多々あります。
通常の美容整形向けのPL保険というのは、患者が死亡の際に支払われるものが主で、
手術が失敗したり、ボトックス注射やヒアルロン酸注射でやり直しが
必要となった場合は、その費用はPL保険では支払われず、
患者が病院と粘り強く交渉して勝ち得える必要があります。

医者に知らん振りを決め込まれたら、それこそまた自分のお金を使って
ほかの病院で元に戻してもらう必要がでてきます。

患者にとって、美容整形での失敗は、何分目立つところゆえに
精神的負担が非常に大きいのが特徴です。

補償交渉も大学病院ならそれなりにできそうなメリットもあります。

もちろん、都心から離れた個人経営の美容整形も患者の紹介による
口コミで、経営が成り立っているところも少なくありません。
広告をほとんど出さずとも口コミで評判が広がり患者がやってくるので、
そうした病院もきっちりと対応してくれることを期待できます。

ところで、美容整形には、他の病気の治療とは違い特殊な事情があります。

それはボトックスにしてもヒアルロン酸、肌を貫き通す糸にしても
外国産のものを用い、それは医者の個人輸入で得ているということです。

最近はプチ整形ブームでヒアルロン酸注射を行うところも増えてきました。
入手するすべを知らない内科医などは、関節用のヒアルロン酸などを
しわの軽減を狙って注射することもあります。

悲しいかな、関節用のヒアルロン酸では分子が小さくて、
すぐに分解してしまいます。

医療用のヒアルロン酸は、眼科用なら分子量が100万くらい
関節用なら400万くらいの分子量のものが使用されます。
化粧品なら100〜200万程度でしょうか。

美容外科のプチ整形に使用するヒアルロン酸は600万くらいあります。
これは日本の医療用ヒアルロン酸にはない分子量なので、
海外から個人輸入するしかないのです。

ちなみにヒアルロン酸の注入というのは、1年で効果がなくなります。
それはヒアルロン酸が体内の酵素によって消化されるからです。

コラーゲン注入もありますが、コラーゲンはアレルギー感さの可能性が
あるため、すぐに注入することはできません。差し支えの無い部位にコラーゲンを
注射して、何か反応が起きないか1ヶ月様子を見る必要があります。

ヒアルロン酸はそのような心配がないので、たとえば美容整形の初診で
すぐに注射してもらえるメリットがあるのです。

アレルギーテストのために1ヶ月も待たされると心変わりする女性も少なくなく、
それゆえアレルギーテストが不要なヒアルロン酸は医者にも経営上のメリットがあり、
最近はヒアルロン酸の注射が流行っています。

ただし、ヒアルロン酸は自分の6000倍の水分を保持することが
出来る成分です。注入する場所がずれると、後日水分を吸ったヒアルロン酸が
体積を増して、しわの軽減どころか皮膚がぷちっと膨らむこともあります。

また、注入する場所が浅いと白くなったりして、目立つようになりますし、
注射といっても医者の技量と経験に左右されるものです。

しかも失敗すれば1年は分解しないので、そのままの状態が続くわけです。

効果の継続が1年となると、成功したときは短い期間ですが、
失敗すると非常に長く感じられる期間となります。

金に糸目をつけずたくさん打ち込むと、万が一のときは
それはもうおかしな顔になる可能性があります。

患者がこうしたいという思いと、この程度までしか安全に改善できないという
ギャップがあるのは安全に注入しようとすると仕方ないのかもしれません。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 美容外科 

2007年10月09日

石鹸屋と化粧品屋のスキンケア

日曜日は、久しぶりに子供をつれて万博公園まで遊びにいきました。
ほんのりと葉が赤くなりつつあるもみじもありましたが、
今年はどうでしょうか。こんなに暑ければ紅葉もずれる様な気もします。

それにしても最近はある程度人が集まるところには、
授乳室がありますし、だいぶ社会がやさしくなってきたような感じです。
万博公園内にもいくつもあって、半日だけでしたが、
赤ちゃんも一緒に気持ちよく過ごせました。

さて、石鹸屋と化粧品屋のスキンケアの違い。

最大の違いは何だと思いますか?

スキンケアは同じように肌を慈しむことを目的としていますが、
使用する界面活性剤についての考え方は全く違います。

石鹸屋は、石鹸以外の界面活性剤は危険とし、
石鹸を乳化剤として使用しますが、化粧品屋は石鹸を乳化剤には使いません。
使うことはないでしょうね。

ここで化粧品屋といってもすべての化粧品屋ではなく、中堅や大手のメーカー
となります。

大昔において界面活性剤は石鹸しかなかったので、古くは石鹸でしか化粧品を
作れませんでした。ただ、現代では石鹸で化粧品を作っているのは
限られたメーカーだけでしょうか。

石鹸はアルカリ性ですが、石鹸クリームを肌に塗ると肌のpH緩衝力により
石鹸が高級脂肪酸になり、石鹸の害はなくなると石鹸屋は説明しています。

ところが、化粧品屋はこの高級脂肪酸を問題にします。

石鹸クリームの最大の問題は、ラウリン酸やミリスチリン酸など
飽和脂肪酸は、メラニンの産出を増やす方向へ動かすこと。

これはメラニンを作る細胞に飽和脂肪酸を与えるとメラニンをたくさん作るので
培養細胞での実験を行っているところなら簡単にわかります。
面白いのはオレイン酸やリノール酸など、不飽和脂肪酸はメラニンを
作らせないことで、こうした知見を元に生協などでリノール酸を美白成分とした
美容液を販売しています。
(大学病院のなかにはしみ治療にリノール酸を用いるところもあります)

培養細胞系でしみを作らせる成分というのは、化粧品原料では
数えるしかないのですが、その成分をわざわざスキンケア化粧品に
使用するというのは化粧品屋の感覚では「ありえない」という感じでしょうか。

石鹸屋に言わせれば、代わりに合成界面活性剤を使用するのは、
これまた「ありえない」ので、お互いの主張が相容れることはありません。

飽和脂肪酸でも微量のステアリン酸というのは、バリア維持に有用なのですが、
乳化剤に使用するほどになると濃度が高すぎて問題になります。
(たとえば洗濯洗剤であっても、一回の洗濯での界面活性剤の使用量を見ると、
 合成洗剤は石鹸の3分の1から少ないものなら10分の1程度となります。
 化粧品の乳化に使う場合も理由があって、石鹸は多量に必要となります。)

また、最近は毛穴が大きくなる女性が増えて、毛穴ケアがトレンドとなっています。
この目立つ毛穴ですが、脂肪酸が大きな原因となることがわかりました。

ちなみに脂肪酸は皮脂が分解されることで供給されます。

ニキビ肌や油性肌では、毛穴が目立っていることも少なくありません。
こういう方々には、ニキビ菌などは皮脂をエサとするため、
皮脂を分解する酵素が多量に肌へばら撒かれています。

このため資生堂や花王、多くのメーカーが毛穴縮小を目的とする化粧品には、
脂肪酸をいかに作らせないかということと、
できた脂肪酸をすばやく取り除くことを効能とした有効成分が配合されています。

面白いのは、こうした脂肪酸を供給する化粧品と取り除くという全く相反する
化粧品がそれぞれ成功していること。

マーケットの多様性にはいつも驚かされます。


shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 化粧品 

2007年10月07日

ドイツとアメリカの自然化粧品基準

ドイツにも自然化粧品の認証団体があります。

BDIHがそうなのですが、有機栽培や遺伝子組み換えをしていない植物由来
原料を主成分としたものです。

エチレンオキサイド、シリコーン、石油化学原料、合成着色料、合成香料は
無配合です。

植物原料については、加水分解、水素添加、エステル化反などがOKで、
動物実験は原則禁止です。

アメリカでは議論が絶えないのですが、アメリカ農務省による有機栽培原料に
対するアメリカの統一基準があります。
有機栽培原料が95%以上ならオーガニックのマークを製品に表示できます。
100%オーガニック原料使用なら、100%オーガニックマーク
95%以上オーガニック原料なら、オーガニックマーク
70%以上オーガニック原料なら、オーガニック原料使用と表示というもの。

ただ、このオーガニック原料の定義を巡って、色々な論争がありました。

たとえば芳香蒸留水。濃度の規定がないので、水でめちゃめちゃ薄めて
匂いがある程度のものでも、オーガニック原料となってしまう・・。

ものすごく匂いが強いものもかすかに匂いがあるものも同じ有機栽培原料として
定義されるのはおかしいのではないかというものです。

欧州、アメリカ、日本、アジア、どの国々でも自然原料を使ったものは
肌によいと考える消費者が多いとの調査結果もあり、こういった認証団体が色々あるようです。


shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(3) 化粧品 

2007年10月06日

ラウリル硫酸ナトリウムは天然の界面活性剤?

日本では、石鹸が唯一の自然の界面活性剤であるという石鹸教の教えが有名かもしれません。

これが真実かどうかは別にして、海外では日本では合成界面活性剤として
分類されているものが、欧米では自然由来とされるものは少なくありません。

理由は簡単で、石鹸教は石鹸製造業者が作った定義が広まっただけのものです。
石鹸以外はみんな合成界面活性剤というもの。

欧米では色々な団体がありますが、原料由来や化学反応の形態によって
「natural」であるかどうかを区別します。

欧州で一番大きな勢力は「ECOCERT」でしょう。
フランスに始まって、欧州や他の多くの国、80カ国で運営されている
オーガニック製品認証団体です。

基準は以下の通りです。

再生可能な原料を使用する
消費者への明確な情報提供(組成、配合量、植物由来かどうか)
エチレンオキサイド無配合、50%以上の植物由来原料をもとに製造された原料
エステル化、エーテル化反応、水素添加など承認された製造法によって製造された原料
遺伝子組み換え原料フリー
防腐剤無配合

ドイツやフランスなどの自然派化粧品メーカーでこのエコサート認証を
とっている所は多いと思います。
エコサートで認証されている自然由来として界面活性剤は、
ラウリル硫酸ナトリウムやラウリル硫酸アンモニウム、アルキルグルコシド、
ポリグリセリン脂肪酸エステル、水素添加レシチン、レシチンなどです。

アルキルグルコシドやポリグリセリン脂肪酸エステルが使えるなら
大抵のクリームは作れると思います。

ただ、クレンジングオイルでよく落ちるものは作るのはかなり難しいですね。

また、防腐剤無配合としているので、防腐効果のあるエタノールを大量に配合したり
しているのもこのエコサート商品の特徴です。(それが肌に優しいか別にして)


shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 化粧品 

2007年10月04日

食品に見る乳化 その2

食品は牛乳や卵は別にして、マーガリンやドレッシング、アイスクリームなど
乳化剤が必要なものが多数あります。

化粧品で使われるオイルは主に室温で液状のものが多いですが、
食品になると液状油だけだと油っぽく、酸化しやすくなるというデメリットが
あります。

つまり、マヨネーズやドレッシングは液状油のみで作りますが、
マーガリンやホイップクリームは固体油を使って作ります。

液状油はサラダオイルや菜種油、ひまわり油などです。
固体油は乳脂や液状油に水素添加してつくる硬化油があります。

乳化する場合は、油状油のみでつくると油っぽくなるため、
そういうイメージがあるものなら別ですが、油っぽい感覚を出したくないものは
固体油を使用して作ります。

また、固体油と液状油を混ぜて使用する場合、固体脂の割合が温度により変化し
それが結晶となったとき、乳化状態に影響を及ぼすことが多々あります。
そのため、乳化したときに油の粒子を細かくして、結晶が出にくくしたり、
微細な結晶を最初からわざと析出させておいたりという工夫が必要となります。

食品の乳化がやっかいなのは、たんぱく質の存在です。
乳化剤というのは、比較的短時間で油の表面に吸着して乳化しますが、
たんぱく質は油の表面にくっつくのに何時間もかかる場合があります。

たんぱく質は乳化した粒子にくっつくと安定化の方向へ進ませますが、
加熱滅菌などで熱を加える場合は、たんぱく質が変性し、
乳化が壊れることもあります。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 乳化と分散 

2007年10月03日

食品に見る乳化

最近、キューピーから2重乳化させたマヨネーズがでました。
通常は水の中に油を溶かすのが乳化ですが、
2重乳化は水の中に油溶かし、その油の中にまた水と油のエマルジョンが
溶けているということです。

食品分野は意外と化粧品より乳化技術が進んでいる場合もあります。

なぜなら、食品系の企業は売り上げが数千億という企業がごろごろあるのに対し
化粧品会社は数えるほど。食品は新規の有効成分を開発するのではなく
基礎技術に研究を費やすことも多いので、様々な乳化技術を擁しています。

新しく出た低カロリーのマヨネーズも2重乳化という面白い技術を
使用しています。化粧品に応用すると塗るときに感触が変わるという
面白い特性があり、資生堂のお高い化粧品にも利用されています。

食品に応用すると、油分が少ないのにオイリー感が持続するという
食感改善効果があります。

単に油分が少ないマヨネーズを作るのは簡単ですが、
それだとオイルが少ない分味が悪く、売れないマヨネーズとなります。
そこで、売れるマヨネーズを作ることになると、ちゃんとマヨネーズの
味が出る必要があり、油分を少なくした食感をカバーするために
乳化技術を使用するわけです。

2重乳化は、食品分野では他にもケーキのクリームにも応用されています。
クリームに使用するとデコレーションしても保形性に優れているという
特徴があります。

食品で使用する乳化剤というのは、グリセリン脂肪酸エステルや
ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンが
主なものですが、これだけの種類でいろいろな食感のものを
作っていくのですから非常に興味が沸くところです。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 食品の科学 

2007年10月01日

医薬品に使われる界面活性剤 その2

医薬品に使われる界面活性剤の種類と一日の最大使用量を書きました。

一日に飲める界面活性剤の上限が決まっているため、
薬の種類によっては、有効成分の投与がたくさん必要なのに
その有効成分を乳化させるのに必要な界面活性剤量が足りないということもあります。

そこで使用されるのはエタノールやプロピレングリコール、グリセリン、
ポリエチレングリコールなどの溶媒です。

これらの溶媒を使用することで、界面活性剤を少なくても
薬剤を可溶化できるというメリットが現れます。

難しいのは、薬剤によっては、これらの溶媒を使用すると
必ずしも可溶化されるわけではなく、余計に溶けにくくなることがあることです。

外用剤の場合は、必ずしも薬剤の有効成分が完全に可溶化される
必要はありません。むしろ可溶化されていない方が
浸透性が高まることもあります。

ただ、経口剤などはある程度水に溶けないと
腸壁面からの吸収が難しいので、界面活性剤を使用して
吸収力をアップする必要があります。

最近は、薬剤を非常に細かく分散する装置も開発されて、
薬剤を微粉末にすることもしばしばあります。
微粉末にすると腸との接触面積が増えるというメリットもありますが、
微粉末同士がくっつきやすくなるという問題が生じてきます。
この微粉末同士がくっついて大きな粒子の固まりになることを
防ぐために界面活性剤が使われるケースも多くなっています。

注射液では完全に薬剤を溶かしていないと
万が一大きな粒子があると毛細血管に詰まることもあります。

注射液に使われる場合は、抗がん剤や抗HIV剤などですが、
薬物による血栓や炎症を防ぐために用いられることが多いです。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(2) 乳化と分散