2008年12月

2008年12月08日

加水分解アミノ酸と醤油

コラーゲンを分解するのに酸やアルカリ、酵素を使用すると書きました。
化粧品で使用するタンパク質の分解は、基本はアルカリまたは酵素です。

塩酸を使用してタンパク質を分解することもあります。
それは食品向けとして使用する場合です。

たとえば、人間の胃液には、塩酸が含まれていて、タンパク質を分解し、
アミノ酸を作っているのはご存知の通り。

塩酸でタンパク質を分解するのは、ごく自然なものと考えられていました。

ただ、10年ほど前から、塩酸を使用したたんぱく質の分解に異議が
唱えられるようにありました。

それは食品用加水分解タンパク質を作る工程で塩酸を使用すると、
クロロプロパノールという発がん性物質ができるということ。

タンパク質を分解したアミノ酸は、醤油や漬物に使われます。
安い醤油は、大豆を発酵させていくと時間がかかりすぎるので、
大豆を分解して作ったアミノ酸液を加えて醤油を作ることがあります。

基本的には、有名な醤油は、アミノ酸液を加えて醤油を作らないので、
家庭で使う分には関係ない話ですが、外食などでは安い醤油を使っている可能性も
あるので、全く関係ないとはいえません。

ちなみにクロロプロパノールは、塩酸とグリセリンが反応して出来るものです。

タンパク質からアミノ酸を作るときに、原料のタンパク質には微量の油が
含まれているのですが、この油が塩酸と反応して、グリセリンに分解され
さらにグリセリンと塩酸が反応して、クロロプロパノールが出来上がります。

8年くらい前だったと思いますが、食品衛生の雑誌にはこの塩酸分解による
クロロプロパノール生成の話題が色々出ていました。

あくまで、タンパク質から出てくるものではなく、共存する脂質と
反応して、出来てくるものです。

クロロプロパノールをグリセリンに戻すには、苛性ソーダと反応させることで、
グリセリンに戻っていきます。

なお、化粧品では、クロロプロパノールが出来るような条件では、
タンパク質を分解しません。
苛性ソーダで分解するほうが早いし、製造設備への負担もその方が低いからです。


shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 食品の科学 

2008年12月05日

コラーゲンと手作り石鹸

タンパク質は、酸やアルカリ、そして酵素によって分解することで、アミノ酸がいくつかくっついたペプチドになり、さらに分解するとアミノ酸となります。

コラーゲンの加水分解物は、化粧品にマイクロコラーゲンなどして配合されているほか、ドリンク剤にもコラーゲンドリンクとして入っています。

コラーゲンを分解することで、ゲル化性能がなくなり、ドリンク剤へ高濃度に
配合することが出来ます。

このタンパク質の加水分解物ですが、製法によってかなり安全性が左右されることが
わかりました。

通常、化粧品では苛性ソーダでゼラチンを煮ることで、加水分解コラーゲンを
作ることが出来ます。
たとえば手作り石鹸を作るよりはるかに低い濃度の苛性ソーダにより
数時間で分解され、ゼラチンは加水分解コラーゲンとなります。

あとはこれを酸で中和して、生成した食塩を抜くことで加水分解コラーゲンが
出来上がります。

ただ、コラーゲンの加水分解物は、結構ニオイがきついこともあります。
理由は、タンパク質を分解するときにアミノ酸の一部も分解して、
ニオイが強い成分が外れてくるからです。

もともとアミノ酸は魚が腐ったときにでるようなニオイが強い成分がいくつか化学結合して出来上がったもの。
それが元の原料に戻ることでニオイが発生します。

酸性側なら、ニオイは発生しないのですが、中性からアルカリ性になると
ニオイが強くなります。そのため、ゼラチンを手作り石鹸に配合すると
肌に良さそうという思惑とは別に、時間経過と共に変な臭いがたってくるという
こともありえます。

コラーゲンの加水分解物は色々ありますが、たとえば健食のアミノコラーゲンなどは
コラーゲンを加水分解したあと、臭いの成分を除去していますので、
手作り石鹸に配合するなら、こういったものを使ったほうが無難でしょう。

ただ、コラーゲンの加水分解物は、苛性ソーダと反応して、苛性ソーダを
消費します。
ケン化が終了したものにまぜても石鹸からアルカリを取りますので、
泡立ちが悪くなります。
そのため、コラーゲンの加水分解物を混ぜる場合は、アルカリ量を減らさずに作った石鹸に少量混ぜるほうが無難というもの。

市販のおそろしく高額の石鹸も石鹸素地は安い石鹸とそう変わりません。
違うのは、アミノ酸などを配合することで、洗いあがりに変化をもたせて、多少なりとも違いを持たせていること。

その少しの違いが何十倍以上の価格差をもたらすのですから、実に石鹸の世界は興味深いと思います(笑)

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) コラーゲン 

2008年12月03日

コラーゲンの知識 その2

老化した牛の皮膚からはコラーゲンの抽出効率が落ちます。

たとえば、牛すじ。料理で、すじ肉を煮込んで柔らかくしてから、食べますが
牛すじはコラーゲンの塊。牛すじに含まれるコラーゲンが老化していると、
コラーゲン同士がくっつき、なかなか柔らかくなりません。

牛タンもコラーゲンが多く入っていますが、コラーゲンが老化していると
同じように水に溶解しにくいため、つまり、よく煮込まないと柔らかくならないという特徴があります。

コラーゲンは毎日作られている成分ですが、如何せん、体内ではコラーゲンを
材料にして色々な組織が組み立てているため、毎日作ってもなかなか組織の置き換えができません。

たとえば、ラットの体内に含まれるコラーゲンが半分置き換わるのが300日と言われています。
ほかの、筋肉のタンパク質は1.7日、腎臓タンパク質は1.7日なのに、
コラーゲンとなると、極端に遅くなります。

ラットの寿命は2年であるため、一度作られると、なかなか新たなコラーゲンに
置き換えるのが遅く、老化していくタンパク質だということがわかります。

ちなみに人間の場合は、25歳で体内のコラーゲンが老化しはじめると言われています。生まれてから、25年は細胞達が頑張って新鮮なコラーゲンに
置き換えていきますが、だんだん力尽きて、新しいコラーゲンを作る元気が
失われていくということでしょうか。

コラーゲンの抽出は牛皮や豚皮そしてこれらの骨がメインとなります。
ほかに魚の皮も使われます。
抽出できる部位は他に軟骨や腱、小腸、胎盤があります。

コラーゲンの塊なのに未利用なものもあります。
それは鱗です。鱗はコラーゲンとアパタイト(リン酸カルシウム)によって
出てきていますので、カルシウムを酸で溶かしだすことで、
コラーゲンの抽出が可能となります。
ただ、今のところ利用が難しいので、鱗は産業廃棄物となっています。

なお、コラーゲンは食べるとお肌によいとされていますが、
人間のもつ酵素ではなかなかコラーゲンを分解して、消化することはできません。

コラーゲン自体はかなり消化性の悪いタンパク質です。

ただ、コラーゲンを熱変性させて、できるゼラチンは、消化性のよい
タンパク質となります。

コラーゲンは3本の糸が絡んで出来上がったものですが、
この3本の糸をほどいて、1本の糸になったものがゼラチンです。

コラーゲンはゼラチンとなることで、ゲル化性能がアップします。

shin_chanz at 00:02|PermalinkComments(0) コラーゲン 

2008年12月01日

コラーゲンの知識

化粧品に使用されるタンパク質といえば、コラーゲン。
コラーゲンは最も有名なタンパク質。

タンパク質は、たとえば薄い紙のようにシート状になるものもあれば、
1本の糸になる繊維状のタンパク質になるものもあります。

コラーゲンは、糸状のタンパク質であり、水に溶けます。

ただ、長いタンパク質なので、水に溶けている分子の数が多くなると、
つまり、濃度が高くなるにつれ、粘度が高くなります。

ヒアルロン酸もそうですが、どうして粘度がでるかというと、
高分子を溶かした液を一定方向に動かそうとすると、
分子同士が摩擦を起こして、動きづらくなるからです。

分子が大きくなればなるほど、摩擦が大きくなります。
つまり、粘度が高くなります。

たとえば、床に1mの糸を寝かして、先だけ持ち上げて手前にひっぱれば
簡単に糸は動きます。
ただ、この糸が100m、1Kmの長さだったらどうでしょうか?
床についた糸の先を持ち上げても重さはありませんが、
床との摩擦でとても1Kmもある長さのものをひっぱるのは容易ではないでしょう。

コラーゲンやヒアルロン酸も同じで、分子が長くなればなるほど
粘度が出てきます。

そして、コラーゲンが1%濃度になると、ほとんど流動性はありません。

また、コラーゲンを分解した加水分解コラーゲンになると、
分子同士の摩擦がおきないため、高濃度にしてもさらさらの液状となります。

このコラーゲンですが、アレルギーを引き起こすことが知られています。
アレルギーを起こしやすいアミノ酸を酵素で切り離したものでも、
まれにアレルギーの原因となります。

ちなみにコラーゲンは、一度作られると他の生体内にあるタンパク質と違って
簡単には置き換えられません。

そのため、コラーゲンの老化という問題が起こってきます。
活性酸素などでコラーゲン同士がくっついていくため、
老化したコラーゲンは水に溶けにくい形となります。

化粧品に使われるコラーゲンは、子牛の皮膚から抽出したもので、
一生涯をまっとうした牛からでは、抽出できるコラーゲンがかなり少なくなります。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) コラーゲン