2010年07月

2010年07月07日

日焼け止めの開発 その5

シリコーンを入れるもう一つ大きな理由は、衣服へ付着させないこと。

有機系紫外線吸収剤の場合は、モノにもよりますが透明ですし衣服へついても目立ちません。

しかし、酸化チタンや酸化亜鉛の場合は、白い粉であり、衣服へつくとそれだけで問題と思う消費者も多くおられます。

日焼け止めだけでなくファンデーションにも言えることですが、衣服への付着問題は頭の痛い問題で、使い方の問題というより商品の問題と考える人も多く、不特定多数に販売する店頭ではシリコーンを抜くことが出来ないということもあります。

もちろん、店頭でも雑貨店や化粧品専門店の専門コーナーで自然派を訴求する場合は、この限りではありません。シリコーン未配合の化粧品は、お客さんを選んで売っていかないといけないため、難しい部分があります。

さて、乳化剤もどうしようかと迷う部分もあります。

海外の自然派化粧品には、乳化剤については合成成分を使っている場合もあります。
たとえばアルキルグルコシドはその典型例ですね。

椰子油やパーム油とブドウ糖から合成します。
椰子油を分解して脂肪酸にした後、還元してアルコールにして、高熱でブドウ糖と一緒にかき混ぜればアルキルグルコシドができあがります。
表示成分名は○○グルコシドとなります。

かなり強い界面活性能力があります。
花王の台所洗剤の主成分。油の乳化能力もかなり高く、ほかの成分に引けをとりません。
日本のメーカーはクリームなど洗い流さない化粧品にはほとんど使いません。
しかし、海外の自然派の多くはこの成分がすべて植物成分から成り立っているということで好んで使います。

文化の違いでしょうね。オーガニックを自負するヨーロッパ系メーカーでも使われます。
私はどうも花王の台所洗剤の主成分がオーガニック化粧品の乳化剤として使われるのには違和感を感じます・・(^^;;

shin_chanz at 00:00|PermalinkComments(17) 日焼け止め 

2010年07月05日

日焼け止めの開発 その4

シリコーンを配合するかどうか。

シリコーンといっても様々な種類があります。

酸化チタンなどのコーティングに使うシリコーンは酸化チタンの表面に焼き付けられます。
つまり、酸化チタンとシリコーンは化学的に結合するため、酸化チタンの表面から外れることはなく、肌に入ることはありません。

シリコーンへ酸化チタンをくっつける過程で水素が出るのですが、この水素対策が不十分だと、化粧品の中で水素ガスが発生し、色々問題を引き起こしました。
もうずいぶん前の化粧品にシリコーンが使われたときの話となります。
水素は火花がるとその濃度によっては爆発するので、廃棄物処理に神経を使ったようです。

さて、化学結合するシリコーンがある一方、ただのオイル状のシリコーンもあります。
ねっとりとしたオイルですが、日焼け止めにも良く使われます。

日焼け止めに使われるシリコーンは主にコーティング用のシリコーン、そしてシリコーンオイルとシリコーン樹脂でしょうか。

シリコーン樹脂は揮発性のシリコーンと一緒に使われており、揮発性シリコーンが蒸発すると、シリコーン樹脂によって肌の上でコーティングができるようになります。

もちろん、皮膜が強いと圧迫感があるので、柔らかく薄い膜です。

このシリコーンの膜が日焼け止めの基本となりますが、シリコーン膜をなぜ作るのでしょうか。

一番には皮脂や汗に対してある程度強くするためで、シリコーンによって落ちにくい日焼け止めとなります。
海水に濡れても落ちず、タオルで体を拭いても落ちない日焼け止めであるウォータープルーフタイプには、欠かせない原料です。

また、耐水性だけでなく使用感も明らかに良くなります。伸び、肌なじみなど、酸化チタンが多いときしみ感が生じるのですが、シリコーンは肌に伸ばすときの抵抗を激減させるため、きしみ感を無くします。



shin_chanz at 00:00|PermalinkComments(0) 日焼け止め 

2010年07月02日

日焼け止めの開発 その3

開発を考えているのはノンシリコーン及びノンポリマー、ノン合成オイルの日焼け止め。紫外線吸収剤も配合しません。

高SPFの日焼け止めには紫外線吸収剤を多く使います。
紫外線吸収剤は、酸化チタンより張るかに細かい粒子として分散しているため、紫外線が通る隙間を与えません。

酸化チタンや酸化亜鉛は、どんなに細かくしても必ず微細な隙間があり、そこに紫外線が入り込んでいきます。

また、酸化チタンや酸化亜鉛は、紫外線錯乱剤という表現がされますが、実際には紫外線吸収剤としての働きもあります。

そこが他の鉄などのほかの金属との違いですが、一定量の紫外線を吸収すると、急激に防御効果が落ちます。

もし、紫外線錯乱だけで紫外線を反射するなら、永遠に効果が続きそうですが、紫外線吸収剤としての効果も持ち合わせており、こちらの方が紫外線を防御するという意味では強いため、一定量の紫外線に当たると、他の有機系紫外線吸収剤と同様に効果が落ちてしまいます。

有機系紫外線吸収剤の場合は、紫外線を吸収すると化学構造が変化して、元に戻るときには光や熱などを放出して、また紫外線を吸収するという繰り返しにより紫外線防御を行います。
ただ、この繰り返しも永遠に続くことはできず、元に戻らなくなるにつれ、紫外線防御効果が落ちていきます。

紫外線錯乱剤である酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムだけで高SPFのものを作ろうとすると、ナノ酸化チタンが必須ですし、そうすると「乾燥」という問題も出てきます。

微粒子になればなるほど、表面積が多くなるため、皮脂を吸う力も強くなります。
もちろん、皮脂を吸うことで、化粧崩れなどを防ぐというメリットもありますが、乾燥も比例して強くなり、乾燥感がそもそも存在しない紫外線吸収剤とは使用感に違いがあります。(ただし、有機系紫外線吸収剤のなかにはミクロ粒子状となっていてあえて肌に浸透しないサイズのものも存在します)

なお、色々読者の方に教えていただいた日焼け止めすが、オーガニックを標榜していてもいくつかは「ナノチタン」であるような気もします。
これを調べるには、電子顕微鏡で見るしかありません。
ただ、MMUのように単なるミネラルの粉なら電子顕微鏡で覗くことも可能なのですが、日焼け止めやファンデーションの場合は、覗いてもナノ粒子の大きさはわかりません。
油などが邪魔をしていて、本当は小さい粒子なのに、周りについている余計な成分のため、誤って大きく見えてしまうからです。
これに対応するには、日焼け止め自体を燃やして、有機系成分を全部飛ばし、電子顕微鏡で覗くしかありません。
今回はそれが出来るかどうかわかりませんが、見てみたいものはいくつかあります。

shin_chanz at 00:00|PermalinkComments(0) 日焼け止め