HLB法石鹸の品質管理 アメリカの石鹸会社より その1

2008年10月31日

酸化チタンのコーティング

さて、酸化チタンのコーティングですが、主にはシリコーンオイルが使われており、そのほか、酸化アルミ、シリカ、酸化ジルコニウムが使用されています。
一種類でコーティングを行うというより、何種類かを組み合わせるのが一般的です。

コーティングというのはわかりづらいかもしれませんが、アーモンドをチョコで包んだアーモンドチョコのようなものとお考えください。

アーモンドが酸化チタンで、外側のチョコがシリカやアルミ、シリコーンオイルという感じです。

また、このコーティングは、原料会社によってかなり品質の差が生じ、まだらにコーティングされたり、酸化チタン同士が擦れて、コーティング剤が剥がれたりといったことが生じます。

たとえば、シリコーンでコーティングする場合は、酸化チタンに対して5%以下のシリコーンを加えて、酸化チタンとシリコーンを混ぜ合わせ、加熱してコーティングを行います。

コーティングを行うシリコーンも色々あるのですが、コーティングの際に水素ガスがでるものもよく使われます。このタイプのシリコーンは、酸化チタンの表面に存在する活性酸素を良く出す部分を重点的にコーティングを行っていくという特徴があります。


ほかには、無機物としてシリカ(要はガラス)、酸化アルミ(アルミなべのコーティングにも使用される)、酸化ジルコニウム(セラミック)などが良く使われます。

酸化チタンにこれらの無機系コーティングを剤を塗って焼くことで、コーティング膜を酸化チタンにくっつけることができます。

酸化チタンをどこまでコーティングするのかは、それぞれの企業の考え方によって変わります。

たとえば、酸化チタンの弱点である活性酸素の放出をかなり抑えるには、コーティング膜の厚みを増さなければなりません。
そうすると、こんどは酸化チタンの特徴であるカバー力や紫外線吸収(反射)効果が落ちてしまうというジレンマに陥ります。

ちなみに酸化チタンのコーティング剤は色々あって、活性酸素の放出を防ぐものから
使用感を向上させるものまで多岐にわたります。

海外のMMUでも酸化チタンをコーティングしているブランドは、いくつもあってシリカ系(Silica,Silicon Dioxide)や脂肪酸+金属ミネラル(Magnesium Stearate、Zinc,Stearate,Magnesium Myristate)、アミノ酸誘導体が使われています。

なお、コーティング剤は一般的に成分表示されます。
たとえば大手ブランドのMMUはシリコーンをコーティング剤として多用していることが成分表示からわかります。ナチュラル系のMMUは、上に書いたとおりです。

ところで、アーモンドチョコを思い出していただきたいのですが、チョコにくるまれたアーモンドにアレルギーがなくてもチョコにアレルギーがあれば、アーモンドチョコは食べれません。

コーティング酸化チタンが肌に合うか合わないかというのは、中の酸化チタンより外側のコーティング剤に注目する必要があります。
通常、コーティング剤は汗や皮脂で溶けるようなものではなく、肌に入るわけではないので、肌に合わないということはほとんど起こらないと思います。

なお、酸化チタンや酸化亜鉛の使いこなしは、いかに活性酸素を防ぐかです。

逆にアメリカの医薬品には、活性酸素をうまく使用するものがあります。

それは、ニキビ菌の殺菌作用を期待したもので、外国で売っているクレアラシルなどには、ベンゾイルパーオキサイドが入っています。
徐々に分解して殺菌作用を示し、外国のニキビ治療では、活性酸素を利用するのが第一選択となっています。日本の抗酸化を主体としたニキビ治療とは、また違います。

白人のニキビ患者は日本人より、重症のニキビの割合も多いので、こういった日本では使用できない「きつめの薬」で対処することもしばしば。

日本でも活性酸素を利用するものとして、アトピーの補助治療で酸性水や
酸化水を使う民間療法があります。(効く人もいれば、効かない人もいる)
特別な機器を使って作りますが、要するにキッチンハイターを酸性にしたものです。
ハイターが安いのは、超巨大な装置で膨大な量を作るので、安く出来るとお考えください。

酸化亜鉛のコーティング剤についての広告
シリコーンでコーティングしたり、プラスチック(コンタクトレンズと同じもの)の玉の中に酸化亜鉛を入れたりという工夫例が示されています。

ちなみにおむつかぶれや体臭防止に使う酸化亜鉛は、コーティングしません。
コーティングせずに酸化亜鉛の表面から溶出する亜鉛の効果を期待しているからです。




001















002



















酸化チタンの細胞毒性。コーティングの膜が厚いほど、細胞毒性が減ることが示されています。(ただし、紫外線吸収効果は落ちます)

003















酸化チタンのコーティングにより、どれだけ酸化チタンから発生するラジカルを減らせるか研究したものです。
日焼け止めに使われる微粒子酸化チタンはファンデーションに使われる顔料酸化チタンより2倍以上のラジカル発生量があり、コーティングを行うことで、ラジカルの発生量が減っていくことが示されています。

004

shin_chanz at 00:01│Comments(16) ミネラルファンデーション(MMU) 

この記事へのコメント

1. Posted by いーころこん   2009年01月21日 23:05
アメリカのMMUメーカー(Mineral BoutiqueとMAD minerals)から、個人輸入でMMUを取り寄せて使用していますが、材料が、titanium dioxide,zinc oxide, mica, iron oxidesとかmicaの次がtitanium dioxideと、比較的二酸化チタンが前のほうにある、カバー力に優れているタイプです。

これまでのお話の流れから行くと、どうもアメリカではピュア二酸化チタンを使っている可能性が高いと考えられると、よくMMUは、「お肌に良いもの」と言われているのとは、まったく正反対と感じているのですが。。。

吸い込みに関しては、ナノではないから大丈夫なのかなぁ、と思いながらも、細胞毒性があるとなると大問題!と、思っています。

また、以前、MMUは防酸化処理がされていないからしみになるという話も聞いたことがあります。その意味は、この細胞毒性のことなのでしょうか?

また、日本の普通のファンデーションやパウダーでカバーした後なら、上記のようなMMUのアイシャドーやチークなどを使っても、細胞毒性は防げるのでしょうか?もしくは、例えば、ホホバオイルなどでプレスすれば、オイルでコーティングされるとか?(そんなことないか?)

すごーくたくさん買い集めてしまったので、「どうしよう?!」と、いう気持ちです。。。

2. Posted by しんちゃん   2009年01月22日 21:24
いーころこんさん、こんにちは

酸化チタンが問題なのは、日光に当たったときに周囲のものを酸化する可能性があるからです。そのため細胞毒性があります。
ただ、細胞毒性があるからといっても無防備に日焼け止めをつけずに日光に当たるよりはましだとお考えください。

なお、日焼け止めやファンデーションなどの後ならMMUを使われても問題ないです。また、スクワランやホホバなど酸化しにくいオイルを使われた後、MMUを使われたら直接MMUを使うよりはオイルが多少なりとも肌をガードしてくれるので、ましだと思います。

海外のMMUでもステアリン酸石鹸やミリスチン酸石鹸、アミノ酸誘導体(Magnesium Stearate、Zinc,Stearate,Magnesium Myristate)等でコーティングしたタイプのMMUが数多くあります。手持ちのMMUをそれらと混ぜて使われてもよいと思います。
3. Posted by Akino   2009年01月22日 23:34
しんちゃんさん、こんにちは。

二酸化チタンのコーティングのお話、とても興味深く拝見しています。

ところで、以前ナノ粒子について調べていた時、二酸化チタンの光触媒作用に関して、粒子径が小さくなるほど光触媒作用は大きくなり、通常の(ナノ粒子でない)大きさの二酸化チタンであれば、活性酸素の発生は肌に悪影響を及ぼすほどではないとの研究発表を読んだので、以来その点に関しては安心して海外の非ナノ粒子MMUを使っているのですが・・・。(シリカやステアリン酸マグネシウムでコーティングされた二酸化チタンは落としにくいので、クレンジングで肌に負担をかけない、簡単に落とせるMMUが好きです)

通常の大きさ(μmのオーダー)の二酸化チタンでも
光触媒作用の懸念があるのでコーティングが必要
なのでしょうか?

それから、全成分表示でシリカ、ステアリン酸マグネシウム等が表示されている場合、大抵最後の方にあるのですが、粉体として配合されているのか、コーティング用に使われているのか見分ける方法はありますか?

便乗質問になってしまってごめんなさい。
最近、化粧品選びに自信が持てなくなってきました・・・。

4. Posted by いーころこん   2009年01月23日 00:15
しんちゃん様、こんにちは。
丁寧な御返事ありがとうございました。すごくありがたいです。
本当のところ、何が良くてどうなのか、色々と情報を得れば得るほど謎が謎を呼ぶ。。というような感じになってしまい、正しいスキンケア・メイクとは?と行き詰っていました。

でも、とりあえず、ちゃんと日焼け止めとファンデを塗ったあとなら、MMUが問題なく使用できると知り、安心しました。(せめて、チークやアイシャドー類は安心して使えます)

Akinoさんと同じで、私の手持ちのものも、一番最後にシリカとだけあるMMUファンデがあるので、同じような疑問を持っています。コーティングなのか粉としての配合なのか。。。

本当に化粧品に対して、自信がなくなります。
こんなにも、なにもかも知らないとお化粧品を選べない時代になるなんて。。。しかも、情報が錯綜している。。。
5. Posted by いーころこん   2009年01月23日 17:38
何度もすみません。しんちゃん様から頂いた御返事を読み返して、「ステアリン酸マグネシウムの入ったMMUと混ぜても良い」とあったので、もしかして、手持ちの手作り用のステアリン酸マグネシウムを混ぜればよいのかしら?と、思ったので、ひつこく書かせていただいてしまっています。すみません。

もし、そうなら、どのくらいの割合を混ぜればよいのでしょうか?コーティングしなくても、混ざっているだけでよいのですか?なんども申し訳ありません。気になっちゃって。。(夜も眠れない?!)
6. Posted by しんちゃん   2009年01月23日 23:24
Akinoさん、こんにちは

酸化チタンはさまざまな粒子の大きさのものがあります。
ナノ粒子の日焼け止めに使われるタイプは、コーティングをしておかないといけません。
MMUに使われるタイプの酸化チタンは0.1μくらいのものが多いのですが、こちらはペンキやインクに使われる大きさで、コーティングした方がよい大きさです。
少なくともペンキに入っているものはコーティングされています。

これ以上大きなもの(1μ以上)になると、大手のファンデーションに使われることもありますが、コーティングはいらなくなります。大きいと電子が内部から飛び出さなくなるため、活性酸素を放出しないからです。

日本国内で入手できるMMUは電子顕微鏡で写真を撮ったとおりで、大きな粒子のタイプは見当たりませんでしたが、アメリカのMMUで大きな粒子を使用しているなら、コーティング剤は使われていなくても問題ありません。

コーティング剤は、量が少ないので基本的には後ろのほうになることが多いと思います。ただ、単なるシリカとの違いは見分けはつきません。ステアリン酸マグネシウムは、どういう目的で配合しようとも酸化チタンの表面につきますので、基本的にはコーティング剤となります。
7. Posted by しんちゃん   2009年01月23日 23:34
いーころこんさん、こんにちは

ステアリン酸マグネシウムを混ぜるのは難しいですね。
たぶん混ぜると使用感が変わります。
混ぜるとしてもミキサーが必要となります。

それよりも海外のステアリン酸マグネシウムなどが入ったものとたとえば等量以上で手持ちのMMUと混ぜて使えばよいです。

それに今は冬なので紫外線は少ないし、お手持ちのMMUを使われてもまったく問題になりません。あくまで問題になるのは、夏の日焼けするような紫外線量がある時です。
紫外線量が少ないときは、活性酸素も出てきません。
8. Posted by Akino   2009年01月24日 01:18
詳しいご説明、どうもありがとうございます。

粒子径0.1μm(100nm)位がコーティングの要・不要の境目なんですね。
ナノ粒子不採用と名言しているメーカーの「ナノ」粒子の大きさの基準も確かそのくらいの大きさでしたので、一安心しました。
また、いーころこんさんへのご回答で、紫外線が少ない時期には、非コーティングの二酸化チタンでも発生する活性酸素は少なく問題がないとのことでより安心することができました。

シリカが粉のまま配合されているか、コーティングに使われているかは、成分表を見ただけではわからないのですか・・・。どちらか書いてあればいいのにと思いました。
多分、シリカの表示があるけれども口コミで「乾燥しない、しっとりする」などと言われているファンデ(米J社とか)は、コーティングで使われている例なんでしょうね。

いーころこんさんのご質問と、それに対するご回答と合わせ、今後ファンデや日焼け止めを選ぶ上で大変参考になりました。

本当にありがとうございました。



9. Posted by いーころこん   2009年01月24日 01:26
しんちゃん様、
本当にありがとうございました!
とっても助かりました!感謝しております。
10. Posted by Akino   2009年01月24日 01:27
ごめんなさい、間違えました。
0.1nmじゃなくて1nm以上がコーティングする必要がないんですよね。失礼しました。
非ナノ粒子は、あいまいですが数百nm〜の大きさがある粒子とする記述が多かったので、安心と言い切れるわけではないですね。
でも、基準がわかって良かったです。
ありがとうございました。
11. Posted by kaori   2010年04月30日 02:39
いつも有益な情報をありがとうございます!

酸化亜鉛は、酸化チタンに比べて光触媒作用が小さいと
書いてあるサイトがあったのですが本当でしょうか?

手作りパウダーに酸化亜鉛を配合したいのですが、
コスメ原料屋さんで扱っている酸化亜鉛はコーティングなしとのこと。
活性酸素発生の問題から、コーティング済みのものがいいなと
思っていたのですが、もし酸化亜鉛の活性酸素発生量が少ないなら、
コーティングなしでも構わないのかな、と思いました。
コーティングなしの方が、酸化亜鉛の肌保護作用は発揮されるようですし。

よろしかったらご教示ください。
12. Posted by 光触媒について   2010年04月30日 21:19
kaoriさん、こんにちは

酸化亜鉛は酸化チタンに比べますと、光触媒作用は小さいです。
ただ、同じ酸化亜鉛でも粒子サイズによっても異なり、
微粒子酸化亜鉛は問題だと思います。
微粒子でなければ、特に問題は無いかもしれません。
ナノサイズのものを微粒子酸化亜鉛や微粒子酸化チタンと呼びます。
13. Posted by kaori   2010年05月01日 16:18
酸化亜鉛の件、お教えくださって有難うございました。
微粒子ではないものを買おうと思います。
14. Posted by mina   2010年05月08日 23:20
しんちゃんさん、こんにちは。いつも勉強させていただいています。一年以上前の記事へのコメントですみません。。

ファンデーションは使わず日焼け止め+御社のシルクパウダーでお化粧していますが、チークにミネラルチーク(原産国アメリカのオンリー○ネラルです)を使っています。気に入った色であまり深く考えずに随分前に日本で購入してずっと2年以上(3gでもなくならないため)使っていますが、成分が[マイカ、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、マンガンバイオレット、カルミン]です。あまり気にしていなかったので見過ごしていたのですが活性酸素対策…これはしていないということですよね?コーティングはされていないように思ったのですが、活性酸素対策に万全を期すためにはやはり使用を控えた方がよいでしょうか。もしよろしければお教えいただけると嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。
15. Posted by しんちゃん   2010年05月09日 08:22
minaさん、こんにちは

日焼け止めを使われているのでしたら、まず問題ないかと。
下地がガードしてくれますから。
また、チークに含まれる酸化チタンは配合量が少ないため、さほど問題になることもありません。ご使用を控える必要はないとお考えください。
16. Posted by mina   2010年05月09日 15:31
そうでしたか!他の場所でも日焼け止めをしていれば大丈夫、としんちゃんさんはおっしゃっていたけれどやっぱりどうにも心配だったのです。でもやっぱり日焼け止めがベールになっているんですね。安心致しました。良かったです。どうもありがとうございました。

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
HLB法石鹸の品質管理 アメリカの石鹸会社より その1