培養細胞とノーベル賞

ｉｐｓ細胞や幹細胞を利用した治療法が模索されていますが、
火傷患者の皮膚移植以外にも様々な分野に応用が期待されています。

培養細胞が本格的に医学に応用されたのは、ウィルスの分離・発見でした。

培養細胞を用いて、ポリオや麻疹ウィルスが５０年前に分離されましたが、
この発見にはノーベル賞が贈られています。

また、培養細胞自体でもウィルスに対するワクチンが作られています。

インフルエンザワクチンを作るのには発育鶏卵が必要で、
旧型の日本脳炎ワクチンにはマウスの脳が必要でした。

生物を利用するワクチンを大量生産するには、どうしても時間がかかりすぎますが、
培養細胞で増殖するウィルスなら、比較的短期間に大量生産することができます。

そのため、培養細胞でのワクチン製造が昔から研究されていますが、
対象となるウィルスを増やすにはまだまだ時間がかかるようです。

培養細胞の利用は化粧品の原料開発で盛んに使われています。
ヒトへの応用の前に、メラニンを作る細胞や皮膚の細胞と一緒に化粧品原料を
培地に加えて培養することで、メラニンを作らせない効果があるとか
細胞を増殖したり、または細胞の増殖を阻害したりという効果が
あるかどうか確認できます。

通常は、細胞機能を損なうものは、体に良くないと思われがちですが、
しみの原因となるメラニンについては別で、
メラニンを作る細胞機能を如何に止めて、細胞自体の生育には影響を及ぼさない
成分の開発に膨大な研究費がつぎ込まれています。

培養機能を用いて、細胞の増殖成分を見出し、なぜ細胞を増やすのかという
発見にもノーベル賞が贈られています。１９８６年のもので、
皮膚の細胞を増やすＥＧＦの発見でノーベル賞が贈られました。

また、これより１０年前には、医療に利用できる遺伝子を見つけることでも
ノーベル賞が贈られています。

培養細胞にはまだまだ未知な部分が多く、さらに培養技術も未完成のため、
これからも多くのノーベル賞候補が眠っていると思われます。