美容外科

2007年10月10日

ブームなのかな。切らない手術。

しわ治療のボトックスやヒアルロン酸、痩身剤の注入など、
切らない手術、メソセラピー(注入療法)がずいぶん前から
ブームとなっています。

しみとりのレーザーはだいぶメジャーになりましたし、
ボトックス(筋肉を麻痺させる食中毒菌の毒素)では飽き足らない方に
ロシアで発明された糸を顔に通して、顔を引き上げる治療法もあります。

やはり、肌を切ると、しばらくの間腫れるので人前に出れない時間が
出来てしまいます。これが嫌がられているのでしょうか。

最近は、大学病院で美容整形に参入するところが増えてきました。
ただ、問題はその費用は決して安くないという点です。
なぜかお分かりですか?

たとえば簡単な二重まぶたにする手術でさえ、一般の病気や怪我の
治療に使う手術室を使用する必要があります。

いくら簡単な手術でも診察室で行うわけにはいかず、
大学病院の手術室を数時間使用するため、割高な費用が発生します。

全額自己負担が原則の美容外科手術では、一般の美容外科の方が
手術コストは安くなるため、どうしても大学病院の方が高くなります。

ただ、美容外科というのは、失敗することも多々あります。
通常の美容整形向けのPL保険というのは、患者が死亡の際に支払われるものが主で、
手術が失敗したり、ボトックス注射やヒアルロン酸注射でやり直しが
必要となった場合は、その費用はPL保険では支払われず、
患者が病院と粘り強く交渉して勝ち得える必要があります。

医者に知らん振りを決め込まれたら、それこそまた自分のお金を使って
ほかの病院で元に戻してもらう必要がでてきます。

患者にとって、美容整形での失敗は、何分目立つところゆえに
精神的負担が非常に大きいのが特徴です。

補償交渉も大学病院ならそれなりにできそうなメリットもあります。

もちろん、都心から離れた個人経営の美容整形も患者の紹介による
口コミで、経営が成り立っているところも少なくありません。
広告をほとんど出さずとも口コミで評判が広がり患者がやってくるので、
そうした病院もきっちりと対応してくれることを期待できます。

ところで、美容整形には、他の病気の治療とは違い特殊な事情があります。

それはボトックスにしてもヒアルロン酸、肌を貫き通す糸にしても
外国産のものを用い、それは医者の個人輸入で得ているということです。

最近はプチ整形ブームでヒアルロン酸注射を行うところも増えてきました。
入手するすべを知らない内科医などは、関節用のヒアルロン酸などを
しわの軽減を狙って注射することもあります。

悲しいかな、関節用のヒアルロン酸では分子が小さくて、
すぐに分解してしまいます。

医療用のヒアルロン酸は、眼科用なら分子量が100万くらい
関節用なら400万くらいの分子量のものが使用されます。
化粧品なら100〜200万程度でしょうか。

美容外科のプチ整形に使用するヒアルロン酸は600万くらいあります。
これは日本の医療用ヒアルロン酸にはない分子量なので、
海外から個人輸入するしかないのです。

ちなみにヒアルロン酸の注入というのは、1年で効果がなくなります。
それはヒアルロン酸が体内の酵素によって消化されるからです。

コラーゲン注入もありますが、コラーゲンはアレルギー感さの可能性が
あるため、すぐに注入することはできません。差し支えの無い部位にコラーゲンを
注射して、何か反応が起きないか1ヶ月様子を見る必要があります。

ヒアルロン酸はそのような心配がないので、たとえば美容整形の初診で
すぐに注射してもらえるメリットがあるのです。

アレルギーテストのために1ヶ月も待たされると心変わりする女性も少なくなく、
それゆえアレルギーテストが不要なヒアルロン酸は医者にも経営上のメリットがあり、
最近はヒアルロン酸の注射が流行っています。

ただし、ヒアルロン酸は自分の6000倍の水分を保持することが
出来る成分です。注入する場所がずれると、後日水分を吸ったヒアルロン酸が
体積を増して、しわの軽減どころか皮膚がぷちっと膨らむこともあります。

また、注入する場所が浅いと白くなったりして、目立つようになりますし、
注射といっても医者の技量と経験に左右されるものです。

しかも失敗すれば1年は分解しないので、そのままの状態が続くわけです。

効果の継続が1年となると、成功したときは短い期間ですが、
失敗すると非常に長く感じられる期間となります。

金に糸目をつけずたくさん打ち込むと、万が一のときは
それはもうおかしな顔になる可能性があります。

患者がこうしたいという思いと、この程度までしか安全に改善できないという
ギャップがあるのは安全に注入しようとすると仕方ないのかもしれません。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0)

2007年08月27日

美容外科につかうヒアルロン酸

最近になって知ったんですが、しわ注入に使うヒアルロン酸は、
日本では未承認なんですね。

医師が個人輸入して、医療に使っているとか。

まあ、医師はたとえ毒薬でも人命を救助するためには、使用できる許可を
持った人たちなので、たいしたことではないのかもしれませんが。

美容外科で注入されるヒアルロン酸は、深いしわや鼻を高くしたりとか
コラーゲンでは出来ない深い陥没の修正を行います。

コラーゲン注入は、顔の浅いしわを修正するのに使われ、
ニキビ跡などの修正にも使用されます。

美容外科で使われるヒアルロン酸は、バイオ製法で作られるものが
メインです。もともと美容外科領域へのFDAによる承認も2003年に
バイオ製法でのコラーゲンとヒアルロン酸が認められ、
2004年に鶏の鶏冠由来のヒアルロン酸が承認されています。

ただ、バイオ製法だと菌が作るので、なにか違うのではないかと
思われがちですが、ヒアルロン酸の場合、ヒト遺伝子を組み込んだ菌を使用し、
ヒトと同じ組成のヒアルロン酸を作るのが特徴です。

鶏冠由来のヒアルロン酸は高度な精製を重ねても不純物を含むため、
アレルギー性があり、実際に体内へ入れる前には、アレルギーが
起こらないかどうか皮内テストをする必要があります。

バイオ由来のヒアルロン酸は不純物を含まないのが特徴で、
この皮内テストも必要なく安全性が高いため、FDAには先にバイオ由来の
ヒアルロン酸が認可されたといういきさつがあるようです。
FDAのサイトにはこのあたりの情報がもっと詳しく書かれているかもしれませんね。

ちなみにバイオヒアルロン酸というのは、コラーゲンを作る細胞を
新生児から採取して、培養して抽出したコラーゲンです。

牛が一般的ですが、金持ちには特別なコラーゲンを用意しているというのが、
いかにもアメリカらしい発想です。
牛由来のコラーゲンはアレルギーの確認のため、皮内テストが必要ですが、
ヒト由来のコラーゲンは安全性が高く、その必要がありません。

また、自分の皮膚から細胞を採取して、培養し、コラーゲンを取り出して
打ち込むという方法も海外にはあるようです。

日本でも、化粧品会社や製薬会社に安全性試験用の培養皮膚を提供する企業が、
重度の火傷などで皮膚を無くした患者のために、患者の皮膚を採取して
移植用の大きなサイズにまで皮膚を育てるサービスを始めるとの報道が
先日ありました。現段階では、コストが掛かるので、重症患者に
移植するサイズの皮膚になると1000万ぐらいのコストがかかるとのことですが
ヒト由来の細胞を利用したものが、少しずつ身近になっていくような気がします。


shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0)

2007年07月15日

血小板注入療法(血漿注入)

3年前のメルマガで、ドラキュラのモデルとなった伯爵夫人の話をしました。


ハンガリーの伯爵夫人で、処女を500人以上殺しては
血を絞って、血液で満たされた風呂にはいったとか。

血を効率よく抜くために、様々な拷問を道具も考案したとんでもない女性です。

血を美容に使うというのは、化粧品では昔から行われていました。
高級化粧品に動物の血が配合されていた時期もあります。
(狂牛病で中止となりました)

実は、うちの近所の皮膚科でもやっています・・(^^;;

ただし、血は動物でもなく他人でもなく、自分の血を使います。
血小板注入療法というもので、ここ1年ほどに急速に普及したようです。

比較的高額の治療法で、特別な薬品を使わないのに20万円くらい取られます。
有効成分は100%自分の血なのに・・(笑)

まあ、採血して、血が固まらないようにEDTAかクエン酸を入れて
遠心分離器にかけて、血小板を分離させ、その血小板を再度注入するだけです。

たったそれだけなのに、皮膚科医や美容外科医といったら・・(苦笑)

自分の血にあるんだったら、ちょっとは血が血管から漏れ出して、
しわやニキビ跡の部分に溜まってくれたら、へこんだ部分が盛り上がって
くれたらと思いますが、なかなかそうはうまくいってくれません。

血小板に含まれる細胞成長因子は強力な細胞増殖及びコラーゲン合成能力を
持っています。少量なら美容になりますが、量が多いと病気になります。

そのため、医療においては、細胞成長因子を阻害する薬なども
開発されています。

たとえば、癌。化粧品ではEGFという皮膚細胞を増殖させる成分を
配合することもありますが、がん細胞はこのEGFを大量に分泌して
自らを増殖させていきます。

なお、血小板注入療法では、細胞成長因子を一気に打ち込むわけではないため
急に盛り上がったりしません。

よく女性の顔に傷をつけて、傷跡が残ったら大変だといわれます。
出血を伴う傷で傷跡が盛り上がったりするのは、細胞成長因子によって
過剰にコラーゲンや皮膚細胞が増殖したためです。

自己修復においては、生物として種を保存しようとする働きが強く
美容的観点から行われません。一気に増殖して傷を埋めるため
勢いが強すぎて過剰にコラーゲンが作られて、皮膚が盛り上がってしまうのです。

じゃ、目に見えないくらいの小さな傷をつけて、細胞成長因子を
出させたらいいじゃんとして考え出されたのが、レーザー治療です。

細胞成長因子をどうやって美容に使いこなすか。
まだまだ、手探りの状態だと思います。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0)

2006年11月18日

コラーゲン注入

しわを即効的に治すというものに、コラーゲン注入があります。
こちらは美容外科手術では、日本でも20年以上前から行われています。

しわの部位にコラーゲンを注入することで、
しわを盛り上げていきます。

ただし、一度の注射でよいというわけではなく、
しわの深さに応じて何度か注射する必要があります。

もともと交通事故などで、出来た傷を修復するために
行われていましたが、注射を打つことでしわも消せることがわかり
今ではしわ取り目的の方が多くなっています。

ただ、ニキビ跡など深い陥没には、しわに比べて
多く注射する必要があり、また修復も完全には行われません。

しわについても深いしわへの適用は無理で
浅いしわのみとなっています。

コラーゲンを注射することの一番の懸念は
アレルギーが起きることです。

数パーセントも発生しませんが、アレルギー反応が起こると
大変なことになるので、皮膚に注射したコラーゲンで
アレルギー反応が起こるかどうかは数ヶ月かけて確認することもあります。

また、コラーゲンは動物由来で狂牛病の原因タンパク質である
プリオン汚染の心配もあります。

プリオンを不活性化するには、高温高圧で処理する必要があり、
医療用コラーゲンをそのような処理を施すと
コラーゲンではなくなるため、原料となる牛や豚を厳選して
製造を行っています。

スーパーの精肉コーナーでもたまに並べてあると思いますが、
SPF豚が原料となりここからコラーゲンを抽出しています。
ちなみにSPF豚とは、健康状態を管理しながら
生育した豚のことです。

なお、コラーゲンの代わりにアレルギー性がほとんどない
ヒアルロン酸を使う場合もあります。

美容外科で使われるヒアルロン酸はスーパーヒアルロン酸と
呼ばれることがありますが、これは化粧品に配合されている
スーパーヒアルロン酸とは全く別です。

通常、ヒアルロン酸というのは、皮膚内にある酵素で
分解されてしまいます。
そのため、コラーゲンにしても半年毎に注射する必要があります。

この手間を減らすために開発されたものもあり、
それはポリアクリルアミド、通称アクアミドです。

アクリルアミド自体は、神経毒がある困った物質ですが、
これがいくつも数珠つなぎになることで、
毒性はなくなり、弾力に富むゲルを作るようになります。

化粧品にも感触向上剤として、ヨーロッパ系の企業は
好んで配合します。

皮膚では分解されることがないので、効果はたぶん一生続くものと
思います。ただ、歳をとると、顔の輪郭がかわり、しわが
増えていきますが、そのときに一部だけ盛り上がって
なんとなく不自然さが出るような気がします。

まあ、そのときが来るまでは誰もどうなるかはわかりませんが・・(--;;

shin_chanz at 22:23|PermalinkComments(6)