2007年08月

2007年08月31日

EUの化粧品規制 その2

EUというのは、良くわからない規制をするところで、
動物実験規制もその一つです。

動物実験をなくすというのは、決して悪いことではありません。

ただ、政治家はポイントを稼ぐためかわかりませんが、
適当に期限を決めてやっているような印象があります。

EUが1993年に化粧品指令で、1997年末で動物実験の廃止を
決めしたが、結局実現ができないということで、撤回。

仕方ないので、次は期限を2002年6月末まで、もしくは
適当な代替法が見つかるまでとして、期限延長ということにしました。

そうこうしているうちに、新しい化粧品令を作って
2003年に公布した指令は、化粧品原料について2009年3月には動物実験の
代替法が難しいもの以外は、すべて廃止となっています。
(化粧品そのものの動物実験は廃止されています)

ちなみに動物実験というのは、食べたときの毒性、皮膚に塗ったときの毒性、
目に入れたときの毒性、アレルギー性があるかどうかの毒性、
紫外線にあたったときに毒性がでるかどうかや、毒性が子供の代にまで
影響するか、発がん性があるかどうかなどを調べます。

いずれEU諸国では、動物実験を行った原料を使用した製品の
流通ができなくなるのですが、欧州を市場にもつ北米や日本のメーカーに
とっては、関係ない話ではなく、EU基準に沿った化粧品を開発する
必要があります。

EU加盟国以外であってもEUの化粧品令に従うことになるため、
EUの域外支配戦術の1つとなっています。

なお、EUは化粧品の動物実験廃止を求めているのに、
リーチ法という化学物質そのものを規制する法律を定めました。

この法律はEU内で流通する化学物質はすべて、
新しく作ったものでも古くからあるものでも生産者が動物実験を行って
安全性を確認しなければならないというものです。

生産量によって、必要な動物実験の数が違いますが、
10tしか作らないものでも皮膚刺激、眼刺激、皮膚感さ性、変異原性、環境毒性の
データが必要になります。

この法律が発案されたときから大変な数の動物実験が
行われるとして、大きな議論を呼んでいました。

化粧品指令からもわかりますが、EUは動物実験というのは、
すぐに代替法が見つかると楽観視して、法律を定めたようです。

実際には、動物実験代替法は思うように開発されなかったので、
膨大の数の動物が犠牲になりつつあります。

環境保護を名目にしていますが、日本やアメリカの企業では、
これまで明らかにしていなかったノウハウ部分の細かい成分の配合まで、
EUに筒抜けになるため、非常に難しい対応が求められています。

単なる環境保護を行うための法律ではないところが、
考え抜かれたEUの戦略ということでしょうか。

shin_chanz at 00:02|PermalinkComments(0) 化粧品原料 

2007年08月29日

EUの化粧品規制

ヨーロッパは環境保護が熱心なせいか非常に化学物質への規制も強くあります。

ただ、化学物質を取り締まるためのものではなく、たとえばリーチ規制は
EU加盟国の競争力向上も規制を行う目的の1つとして挙げていますので、
単に環境保護が熱心なわけではなく、日本や中国、アメリカとの競争に
打ち勝つための規制でもあります。

かつて日本も薬事法で、化粧品に使える成分を2000余りに限定し、
海外からの化粧品の流入を防いでいたこともありました。

アメリカが貿易交渉において、薬事法が海外からの輸出に障壁となっている
ことを強硬に取り上げ、厚生省が規制を撤廃し、全成分表示制に
移行したのは記憶に新しいと思います。

日本の成分規制は、ネガティブリスト制として、
配合してはいけない成分を30個決めて、医薬品の成分以外は
基本的に自由に配合してもよいことになっています。

ただ、タール色素や防腐剤、紫外線吸収剤などは、事前に安全性を
確認したものしか使えません。

これに対して、アメリカでは禁止成分は8個だけ、
色素に関してのみ事前に安全性を確認したものを使うことになっています。

EUは非常に厳しく、配合禁止成分が1211も細かくあります。
色素や防腐剤、紫外線吸収剤については日本と同じように
事前に安全性を確認した成分のみとなっています。

ただ、日本では、日焼け止めに配合する酸化チタンに配合量の規制は
ありませんが、EUでは配合濃度上限が決められています。

フランス人やイタリア人があれこれやっているというより
ドイツ人が細かく緻密に決めているのかなと思っていますが・・(笑)

ただ、規制が厳しい=安全ではないので、念のため。

shin_chanz at 00:02|PermalinkComments(0) 化粧品 

2007年08月27日

美容外科につかうヒアルロン酸

最近になって知ったんですが、しわ注入に使うヒアルロン酸は、
日本では未承認なんですね。

医師が個人輸入して、医療に使っているとか。

まあ、医師はたとえ毒薬でも人命を救助するためには、使用できる許可を
持った人たちなので、たいしたことではないのかもしれませんが。

美容外科で注入されるヒアルロン酸は、深いしわや鼻を高くしたりとか
コラーゲンでは出来ない深い陥没の修正を行います。

コラーゲン注入は、顔の浅いしわを修正するのに使われ、
ニキビ跡などの修正にも使用されます。

美容外科で使われるヒアルロン酸は、バイオ製法で作られるものが
メインです。もともと美容外科領域へのFDAによる承認も2003年に
バイオ製法でのコラーゲンとヒアルロン酸が認められ、
2004年に鶏の鶏冠由来のヒアルロン酸が承認されています。

ただ、バイオ製法だと菌が作るので、なにか違うのではないかと
思われがちですが、ヒアルロン酸の場合、ヒト遺伝子を組み込んだ菌を使用し、
ヒトと同じ組成のヒアルロン酸を作るのが特徴です。

鶏冠由来のヒアルロン酸は高度な精製を重ねても不純物を含むため、
アレルギー性があり、実際に体内へ入れる前には、アレルギーが
起こらないかどうか皮内テストをする必要があります。

バイオ由来のヒアルロン酸は不純物を含まないのが特徴で、
この皮内テストも必要なく安全性が高いため、FDAには先にバイオ由来の
ヒアルロン酸が認可されたといういきさつがあるようです。
FDAのサイトにはこのあたりの情報がもっと詳しく書かれているかもしれませんね。

ちなみにバイオヒアルロン酸というのは、コラーゲンを作る細胞を
新生児から採取して、培養して抽出したコラーゲンです。

牛が一般的ですが、金持ちには特別なコラーゲンを用意しているというのが、
いかにもアメリカらしい発想です。
牛由来のコラーゲンはアレルギーの確認のため、皮内テストが必要ですが、
ヒト由来のコラーゲンは安全性が高く、その必要がありません。

また、自分の皮膚から細胞を採取して、培養し、コラーゲンを取り出して
打ち込むという方法も海外にはあるようです。

日本でも、化粧品会社や製薬会社に安全性試験用の培養皮膚を提供する企業が、
重度の火傷などで皮膚を無くした患者のために、患者の皮膚を採取して
移植用の大きなサイズにまで皮膚を育てるサービスを始めるとの報道が
先日ありました。現段階では、コストが掛かるので、重症患者に
移植するサイズの皮膚になると1000万ぐらいのコストがかかるとのことですが
ヒト由来の細胞を利用したものが、少しずつ身近になっていくような気がします。


shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 美容外科 

2007年08月26日

イオン導入

資生堂がイオン導入の報告文をフレグランスジャーナル誌に書いていました。

昔は、資生堂の技術者というのは、自社の糖付加タイプのビタミンC誘導体が
一番という考え方だったんですが、リン酸型ビタミンC誘導体についても
積極的に研究しているようです。

今は、化粧品会社が皮膚科を経営する時代。

東京では多くの化粧品会社が皮膚科を開設したり、併設のエステサロンを通じて
大きな収益源にしています。

まあ、こういう姿勢に対しては、批判的な皮膚科医も多いようですが。

さて、その報告文の中では、リン酸型ビタミンC誘導体のイオン導入について
触れていました。

マイナスとプラスのイオン導入で、どちらが効果的なのかということ。

結果は、当然なのですが、プラス極では全く皮膚には入りません。
たとえ30分行っても全くのゼロです。

逆にマイナスでのイオン導入では、10分で20μg/cm2、
20分では55μg/cm2、30分では90μg/cm2と
時間が経つにつれて浸透していることが示されていました。

他にイオン導入を検討したのが、一押しのアルブチン。
基本的には、中性ではイオン化しない成分ですが、
60分のプラスのイオン導入では、5μg/cm2、
マイナスのイオン導入では3μg/cm2と、
なんとか時間をかければ、ほんのわずかですがイオン導入されることが
示されています。

ただ、家庭用のイオン導入器では、こんなに長くイオン導入することは
ありませんので、現実的には、アルブチンをイオン導入しようとしても
わずかしか浸透させられないと思われます。

また、この報告文にはイオン導入器が本当に電流を流しているのかという
評価をしていました。

据え置きタイプは3機種を調査して、そのうち2機種は最大1.3mA、
1機種は0.17mA、家庭用は3機種を調査して、
単5電池4本を使用するタイプ2機種が、0.13mAと0.10mA、
充電池を使うのが0.03mAと機種によって電流値が大きく違うとのことです。

ちなみに0.5mAくらいがだいたい痛みを感じずにイオン導入できる
電流値となりますので、家庭用のイオン導入器は流す電流を大幅に制限
していることがわかります。


shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 超音波導入器 

2007年08月24日

ニトロソアミン

トリエタノールアミンやジエタノールアミンの発がん性について
注意すべきはニトロソジエタノールアミンと書きました。

ただ、ニトロソアミンは、直接DNAに作用するわけではありません。

ニトロソアミンは、体内にある薬物代謝酵素チトクロムP−450によって
カルボニウムイオンという反応性の高い成分となり、
それがDNAと反応してDNAをアルキル化し、発がん性をもたらします。

つまり、発がん性を示すには、まず発がん性物質が
体内に入り、細胞内へ浸透する必要があります。
さらに細胞内で、酵素による修正を受けて、DNAがある核内に
存在しないといけません。また、存在しても周りのたんぱく質ではなく、
DNAにくっつく必要があります。

たとえ、DNAをアルキル化しておかしなDNAにしても
細胞機能に変化が起こり、生き残る確率が少なくなります。
また、生き残ってもおかしな細胞には自殺するメカニズムが備わっています。

自殺するメカニズムが働かなくても、NK細胞など、癌化した細胞を攻撃する
細胞が排除に取り掛かります。

発がん性といっても、そんな簡単に癌になるわけでもないのです。

とくに一番最初のP−450の酵素活性には、人によってかなり違います。
タバコなど良く吸っている人はこの酵素の活性が強くなります。

ちなみに直接癌化する化学物質は、それほど多くありません。
それは、そんな強い化学反応を起こすものは、周囲の物質と反応して
他のものに変化するためです。

身の回りにある化学物質はチトクロムP−450などの酵素により
はじめて活性化して、周囲のたんぱく質などと反応するようになります。
癌化されるかどうかは、上に書いたとおり、運悪く、活性化して
反応性が高くなったものが、細胞核内のDNAと反応した場合です。


shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 発がん性物質 

2007年08月22日

トリエタノールアミンが人気なので 3

ニトロソジエタノールアミンに極めて厳格なのは、ドイツです。

ドイツではこれが入る可能性がある化粧品は、製造されることはありません。

ヨーロッパは、こうした微量成分については非常に厳しく対応しています。

ちなみに、トリエタノールアミンは、トリエタノールアミン100%か
ジエタノールアミンが数%ほど混ざっているものの2種類が流通しています。

このトリエタノールアミン自体にニトロソジエタノールアミンが
混ざっているかというと、原料メーカーでは、検出限界以下の証明をしているところもあります。
トリエタノールアミンの製造元というのは、資本金が何千億もあるような企業で、
ニトロソジエタノールアミンの測定も難なく行います。

要するにトリエタノールアミン自体には、発がん性のニトロソアミンは混入せず、
むしろ何も考えずに配合して化粧品を作るとニトロソアミンが発生するわけです。

無知な化粧品屋こそが問題ということでしょうか。

ヨーロッパには、欧州化学物質生態毒性及び毒性センター(ECETOC)という
機関があり、FDAと同じようにヨーロッパで販売されている化粧品の
成分を分析しています。
1990年に防臭剤、ローションなど62製品を調査したところ3製品から
ニトロソジエタノールアミンが検出されたと発表されています。
その最高濃度は53μg/kgです。1gの100万分の1が1μgです。

アメリカの環境保護局では、ニトロソジエタノールアミンの動物実験(1988年)
を行ったデータがありますが、それによると飲料水に1μg/kgを
一生涯飲み続けると、発がん性のリスクは1万分の1と評価しています。
1μg/kgなので、体重50kgの1万人が毎日50μgの
ニトロソジエタノールアミンを一生飲み続けると、そのうちの一人が
癌にかかるという値です。癌にかかるというだけで、癌死を意味しているわけではありません。

ヨーロッパで販売されている化粧品でこのニトロソジエタノールアミンの
最高濃度は53μg/kgで、シャンプーには41μg/kgが
含まれていました。(1990年、ECETOC)

つまり、体重50kgの人がローションを毎日1kg、
シャンプーなら1.2kg一生飲み続ければ、そのうちの1万人に1人は
癌になってしまうという程度の問題です。
(Journal of American College of Toxicology 15(6) 527-542 1996
 米国化粧品原料安全性再評価機関報告書より)

ちなみにトリエタノールアミンには、NTPから長期毒性に
ついてのレポートがあります。ねずみのデータです。

TR-449 Toxicology and Carcinogenesis Studies of Triethanolamine (CAS No. 102-71-6) in F344 Rats and B6C3F1 Mice (Inhalation Studies)
http://ntp.niehs.nih.gov/index.cfm?objectid=070A39A5-DFA3-7DD8-D700972EEC03B933
Reportタイトル TR-518 Toxicology and Carcinogenesis Studies of Triethanolamine (CAS No. 102-71-6) in B6C3F1 Mice (Dermal Studies)
http://ntp.niehs.nih.gov/index.cfm?objectid=070B6081-91FD-C657-D4DB0A226B92C06B
血管腫が出来る可能性が示唆されていますが、不確かなので、
まだ、確認のための追試が必要のようです。

ちなみに化粧品には、トリエタノールアミンは入っていますが、
何かとくっついた形となっています。酸を中和する中和剤として使用されるからです。

本来、化粧品にはトリエタノールアミンが遊離して単独の状態で存在
しているわけではなく、何かの塩になっているので、
その形で毒性を調べる必要があります。

クエン酸などの塩になることで、毒性など大きく変化します。
皮膚への浸透性も大きく変わります。
トリエタノールアミンはアルカリ性で皮膚刺激もあって当たり前ですが、
何かの塩となることで、中性となり、大幅に皮膚刺激も無くなってしまいます。

このことには留意しておいてくださいね。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(2) 化粧品原料 

2007年08月21日

トリエタノールアミンが人気なので 2

トリエタノールアミンの毒性研究しているFDAの報告によると
1977年に化粧品中のニトロソジエタノールアミンの量を測定すると、
32の試料から31%の割合で検出されニトロソジエタノールアミンとして
35−1300000ppbの割合で検出されています。

1992年なら、12の試料から67%確立で210−2960ppb
検出されています。

検査する試料が減っているのは、かつてニトロソアミンが入っていることが
問題になり、それを調査すると防腐剤が原因となっていたことが
わかったからです。

その防腐剤は、日本では許可されていませんが、
アメリカでは今なお使用されているため、その防腐剤を配合している
化粧品を中心として調査を進めています。

ちなみにニトロソジエタノールアミンというのは、
亜硝酸とジエタノールアミンが反応して出来るものです。
一度くっつくと簡単に離れません。

亜硝酸とトリエタノールアミンは反応するのですが、中和反応のため、
亜硝酸とくっついてもアルカリ側になると離れてしまいます。
しかも、亜硝酸の水溶性を高めるため、トリエタノーアミン亜硝酸塩の場合は、
亜硝酸の排出を体の中から高める可能性があります。

亜硝酸とトリエタノールアミンがくっつくのは、かなりの高温でないと
いけないため、常温では中和反応しか起きないと考えるのが妥当でしょう。

モノエタノールアミンの場合は、亜硝酸とくっついて、
ニトロソモノエタノールアミンが出来ますが、
この化合物は不安定なため、すぐに壊れてしまいます。

ジエタノールアミンもモノエタノールアミンもそれぞれニトロソ化が
簡単に起こるのではなく、常温ならジエタノールアミン亜硝酸塩や
モノエタノールアミン亜硝酸塩になる割合も多くなります。

たとえば、自動車の排ガスでNOXというものがあります。
一酸窒素や二酸化窒素、三酸化窒素・・などです。
自動車の燃料はガソリンだけで、これは炭素の塊です。
燃えても、一酸化炭素か二酸化炭素になるだけですが、
実際はNOXも放出されます。

それはなぜかというと、通常は窒素と酸素は反応せず混ざっているだけです。
それが、エンジン内は高温のため、ピストンで圧縮されると
窒素も酸素とくっついてしまいNOXに変化するからです。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 発がん性物質 

2007年08月20日

臭いミンクオイル・・

ミンクオイルを買って開封すると、とても臭いが大丈夫かという
問い合わせをもらいました。

通常、化粧品グレードのミンクオイルというのは、
匂いはほぼ無臭レベルのものと考えてもらった方が良いです。

臭いがあるのが当たり前ではなく、臭いがないのが当たりまえなんです。

ミンクオイルは、皮革製品の手入れに良く使われます。
そういうレベルですと、オイルに多少臭いがあっても使えないこともないので、
低い精製度のものが使われます。

他のオイルもそうですが、オイルは精製すると臭いはしません。

臭いは揮発性の物質が発生するから起こるのですが、
そういうものは、オイルが酸化することで起こります。

オイルの酸化で述べましたが、オイルは酸化するとどんどんくっついて
どろどろの粘液になる場合と、分解して小さな分子となり
飛んでいく場合があります。

つまり、オイルに臭いがあるというのは、購入した人の手元に届く前に
どういう取り扱いをされているかということを暗に語っているものなのです。

臭いがきついオイルというのは、スキンケアには使えないと考えた方がよいでしょう。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 化粧品原料 

2007年08月19日

トリエタノールアミンが人気なので 1

トリエタノールアミンの毒性でこちらに飛んでくる方も多いので、
もうちょっと付け加えます。

トリエタノールアミンは発がん性があると主張する方も多いのですが、
それはかつてのFDAの報告にあります。

ただ、この報告を読んでみると、トリエタノールアミンではなく、
トリエタノールアミンに微量含まれているジエタノールアミンが
亜硝酸と反応して出来るニトロソジエタノールアミンを問題にしています。

ところがなぜかトリエタノールアミンが問題とする主張も多い。

モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンは、
それぞれアンモニアに酸化エチレンをくっつけて作ります。

モノエタノールアミンなら、酸化エチレンは1つ、
ジエタノールアミンなら2つ、トリエタノールアミンは3つです。

それじゃ、4つはないのかというと・・・、ありません。

それは、反応しないからです。

これが重要なんです。

トリエタノールアミンになると、それ以上はよほど特別なものでないと
反応しにくくなります。
つまり、それなりに安定だということ。

逆にモノエタノールアミンは、他のものとくっつくための手が2つ、
ジエタノールアミンは1つ余っています。

つまり、こちらの両者は「別の何か」に変わる余地があるということです。

ちなみに人間様はエタノールアミンと関係ないかというと、
そんなことはありません。

人間の体でも、大量にエタノールアミンが作られています。

工業的には酸化エチレンが使われますが、人間様は酵素で楽に作ります。

ちなみにモノエタノールアミンは、非常に強いアンモニア臭がありますが、
これがジエタノールアミン、トリエタノールアミンになるに従い
匂いが減っていきます。
とくにトリエタノールアミンになるとほとんど臭いがなくなるため、
化粧品に良く使われます。

shin_chanz at 09:48|PermalinkComments(0) 発がん性物質 

2007年08月17日

高濃度ピュアビタミンCについて2

ビタミンCは古くて新しい成分です。

濃度が低いと効果は認識されませんでしたが、高濃度化で本来の実力を発揮します。

25年も歴史がある成分です。だいたいどういう風に使いこなせば
安定になるのかは色々検討されています。

一番安定なのは、通常は粉で、使うたびに水や美容液と混ぜて使用するタイプの
ものです。ただ、サンスターが出したのは、クリームタイプです。
美容液やジェルでは酸化する成分が、クリームにすると酸化しにくくなります。

これは乳化技術なのですが、乳化剤で酸化しやすいものを覆ってやると
酸素との接触が妨げられて、酸化しにくくなることを応用しています。

ただ、美容液タイプもありました。
エイボンなどが日本で平成元年に特許を出願していますが、
プロピレングリコールなどの溶剤に溶かす方法です。

水の中にアスコルビン酸を溶かすと酸化しやすくなるため、
溶剤の中に溶かしてしまおうという考え方です。

いま、主流となっているのは、この約20年前の考え方の商品です。

アメリカの偉そうなドクターが自分が開発したとか言っていますけど、
溶剤に溶かすという概念はずいぶん昔からあるもので、
しかもスキンケアに使える溶剤というのは、何千、何百もあるわけではありません。

水と混ざりやすく、アスコルビン酸とも混ざり合える溶剤というのは、
ある程度限定されます。何十もないでしょう。

それは炭素数が大きいと水に溶けなくなるため、炭素数で限度がかかること。
分子が小さい溶剤には毒性を持つものも少なくなく、
安全に使える溶剤も限られてきます。

たとえば、エトキシジグリコールを使用しているものもありますが、
これはエタノール1に対して酸化エチレンを2くっつけたものです。
これがエタノール1に対して酸化エチレンを1くっつけたものは
エチセロ(エチルセロソルブ)と呼ばれ、生殖毒性が強く工業用にも
自主的に使用が制限されているほどです。

また、アスコルビン酸が安定なpH領域というのは、文献をみれば書いてあります。

すなわりpH2が安定で段々高くなるにつれ不安定になります。
そしてpH4が一番不安定で、ここを超えるとpHが高くなるにつれ
pH6で安定となっていきます。

ちなみにアスコルビン酸の2%水溶液を高温で加熱して、変化を見たものです。
pH2.59なら残存率は96.3% 着色度小
pH3.03なら残存率は92.8% 着色度中
pH4.00なら残存率は85.1% 着色度大
pH5.02なら残存率は89.8% 着色度中
pH6.15なら残存率は87.7% 着色度大
pH6.96なら残存率は94.9% 着色度大
フレグランスジャーナル1997年3月号より

どのpHで安定でしかも着色がしにくいのかは一目瞭然です。

ピュアビタミンC化粧品を作るに当たって、重要などのpHで安定なのかという
情報は簡単に手に入りますし、文献調査によってどういう溶剤が使えて
使えないかというのもわかります。

つまり、難易度はそれほどでもないのに関わらず、
100円化粧品で売れそうな原価なのに、とても高く販売されるのは・・・(^^;;


shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 化粧品