2007年10月

2007年10月29日

ナノ粒子と人間の体 その3

さて、ナノ粒子が体内に入った場合、その大きさでどこの臓器へ溜まるか
決まっています。

大きさが12ミクロン以上になると肺の毛細血管で止まります。
止まるというか、血管が詰まるというのか、肺は酸素を取り込むための
重要な器官ですが、人間の血液を濾す器官としても働いています。

ただ、12ミクロン以上の粒子はナノ粒子とは言いません。
このぐらいの大きさになると化粧品のクリームを作るときに
乳化に失敗したやつという具合でしょうか。

正常な皮膚やアトピーの方の皮膚からも吸収できないぐらいの大きさです。
どちらかという吸入したり、食べてしまったときに入る大きさの粒子でしょうか。
ただ、腸の壁面からは傷がない限り吸収できない大きさと思います。

化粧品で一般に言うナノ粒子は0.5ミクロン以下となるでしょう。
このぐらいの大きさの粒子ならとくに肝臓で蓄積されます。

血管の中にいる免疫細胞が食べる大きさの粒子は、2〜3ミクロンぐらいで
一般の乳液やクリームくらいの粒子の大きさです。

まあ、誤って傷口にクリームを塗って体内に入っても、
免疫細胞が食べてしまうという感じになります。

ちなみに医薬品でナノ粒子が注目されているのは、0.2ミクロン以下の
粒子となると、肝臓だけでなく癌組織や炎症を起こしている組織に
よく溜まっていくようになるからです。

これはこれらの組織では正常でない大きさの血管ができるためで、
それをうまく利用することで、抗がん剤や抗炎症剤のナノ粒子化が
行われています。

抗がん剤や抗炎症剤は、副作用も大きいので、目的とした部位以外の
正常組織に到達するとロクなことが起きません。
そういう副作用をなくすということで、医薬品ではナノ粒子が大活躍しています。

ただし、動物実験では0.1ミクロン以下の粒子は、ねずみの脳内への到達も
示唆されていますから、適切な粒子の大きさというのは、今後も様々な角度から
研究されていくものと思われます。


shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 化粧品 

2007年10月28日

ナノ粒子と人間の体 その2

化粧品のナノ粒子は大きく2つに分かれると書きました。

もし、体に入った場合ですが、ナノカプセルやリポソームの場合は
免疫細胞などに食べられたり、分解したりします。

意外にナノカプセルが体内に入るとそのままの形で存在するのは、
難しいのです。

抗がん剤の中には、癌組織へうまく侵入するようにリポソームという
天然の乳化剤であるレシチンで抗がん剤を包んでいるものがあります。

ただ、単にリポソームにすると、免疫細胞が敵と錯覚して食べてしまうので、
薬がなかなか癌組織へと到達しません。(肝臓にもクッパー細胞という
異物を処理する細胞があります)

そこで、抗がん剤に使われるリポソームは表面にポリエチレングリコール(PEG)
というものでコーティングして、免疫細胞が興味を示さないように工夫されています。

PEG自体は、PEG8やPEG50など、化粧品には保湿剤として
使われることが多いのですが、これでリポソームをコーティングすると
PEG層の上に水の層ができて、この水の層によって免疫細胞は味方と
錯覚します。

アメリカ軍の戦闘機が電波吸収剤を塗って、レーダーをかいくぐる
ステルス戦闘機を開発していますが、医療用リポソームも免疫細胞の
捕食を避けるので、ステルスリポソーム(商標登録までされています)と呼ばれています。

ちなみに免疫細胞に食べられると様々な酵素で分解されます。
化粧品で使われるナノエマルジョンやリポソームは主にレシチンで出来ていますし、
レシチンは人間の体にも大量に存在する成分なので、いとも簡単に細胞内で消化されます。

また、ポリソルベート80などの合成界面活性剤に対しても
界面活性能を失活させるのに十分な分解酵素を持ち合わせています。
(要するに細胞の持つ酵素で分解できるように界面活性剤が設計されているかどうか
 になりますので、すべての界面活性剤が細胞の酵素で活性を失うわけではありません)

ただ、免疫細胞や肝臓でも処理できないのが、酸化チタンなどの金属化合物です。

これらは傷口に塗らない限り皮膚内への浸透はしません。
また、皮膚内に入ったとしても毛細血管やリンパ管からさらに内部へ
入り込むというのは難しいでしょう。

体内へ入った小さな粒子の場合は、肝臓で化学的に処理されなくても、
胆汁として排出することもできます。
一方的に体内に蓄積されていくわけではありません。

金属ナノ粒子の影響については、現在アメリカや日本、欧州などで
精力的に調査されているところです。

もうしばらくすれば調査結果が公表されてくるものと思われます。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(8) 化粧品 

2007年10月27日

ナノ粒子と人間の体 その1

ナノ粒子を売り物にしている化粧品が数多くあります。

ただ、化粧品に配合されるナノ粒子は大まかに二通りあって、
ナノよりもっと小さい分子が集まって出来たナノ粒子と
それ以上小さくならない固いナノ粒子です。

前者は、ナノカプセルやリポソーム、ナノエマルジョンといったもので、
小さな分子がたくさん集まってナノ粒子を構成しているため、
永久に安定というわけではなく、徐々に壊れていきます。

これはナノカプセル等を構成している分子が水に溶けたり溶けなかったりという
ことを繰り返すカプセル素材のため、永久にナノカプセルを保つということは
ありません。

最近は、生分解性プラスチックでナノカプセルを作るという技術も開発され
一部の美白化粧品や育毛剤に応用されています。

一方、固い粒子というのは、日焼け止めに配合されている酸化チタンが
代表的なものです。ほかにも酸化亜鉛や酸化ジルコニウムなどの金属や
微粒子シリカなど色々なナノ粒子が開発され化粧品へ配合されています。

日焼け止めとして使う場合は、単にナノにすればよいというわけではないので、
粒子の大きさを少し変えて配合することも多いです。

ちなみに化粧品には使いませんが、鉄などの金属をナノ粒子化することも
流行しています。
ナノ粒子化すると表面のエネルギーが増大するため、
何百度に加熱して発揮する触媒作用が室温で発揮したりと
様々な不思議な現象を見出されています。

さて、このナノ粒子ですが、体内に入るとどうなるのでしょうか?

shin_chanz at 12:58|PermalinkComments(2) 化粧品 

2007年10月25日

月経前症候群対策

月経前症候群で苦しむ女性は、20〜40歳の女性は特に発症しやすく
軽症例を含めると8割に達するとの推計があります。

月経前症候群の定義は、「月経開始の3〜10日前から始まる身体的、
精神的症状で月経開始とともに減退もしくは消失するもの」とされています。

具体的な症状はイライラや食欲が増す、憂鬱、便秘、むくみなど
女性にとって良くない症状ばかり引き起こされます。

この月経前症候群の解明はまだまだ時間がかかるようですが、
γーリノレン酸の不足が影響しているのではということが推測されています。

具体的には、月経前症候群発症者と発症していない人の
血液中のγリノレン酸の量を比べると有意に発症しない人に比べて
低いことがわかっています。

05年に日本人女性を対象とした試験においては、
1日180mgのカプセルを3月経週間投与することで、
γリノレン酸の量が増えて、月経前症候群の症状が改善されました。

特にイライラや怒りやすくなるという症状での改善効果が
高くなっています。

γリノレン酸自体は、リノール酸を食べると酵素によって
作られますが、人によっては酵素の働きが十分でない場合もあります。

月見草油やボラージ油などがγリノレン酸を含んでいますが、
気になる方は試されたらどうでしょうか。

イライラ感が減るだけでも大きいと思います。


shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 高機能健康食品 

2007年10月24日

ビタミンKと動脈硬化

ビタミンEとならんで、動脈硬化を予防する効果が認められているのが、ビタミンKです。

ビタミンEは抗炎症効果と酸化防止効果で、動脈硬化を予防します。

それでは、ビタミンKはどうやって動脈硬化を予防するのでしょうか?

それは血管の石灰化防止によってです。

実は炎症を起こすと、細胞はコラーゲン繊維を作ったり、
カルシウムを付着させたりするのですが、それの度が過ぎると
様々な致死性の病へと進行していきます。

動脈硬化はその名の通り動脈が硬くなるわけですが、
石灰化もその大きな要因の一つ。

骨ができるのと同じメカニズムで動脈にカルシウムが付着していきます。

これを防ぐには、骨代謝を調整するタンパク質が正常に
働いていることが前提となるのですが、
この骨代謝タンパク質こそがビタミンKに依存したものとなっています。

しかも野菜に含まれるビタミンK1では効果がなく、
納豆などの発酵食品や動物性食品に含まれるビタミンK2でないといけません。

マウスを使った動物実験では、このタンパク質が欠乏していると
全身の動脈に石灰化が起こり、硬くなった動脈のため、心臓に負担がかかり
死亡することがわかりました。この実験によりビタミンKの重要性が
再認識されたわけですが、人間においてもビタミンK2を多く摂っている人達は
そうでない人達に比べて、心臓病による死亡率が半分以下ということが
判明しました。

また、ビタミンK2は脳や精巣で特に多く含まれるのですが、
脳内では脳に多く含まれるグルコシドセラミドの酸化防止剤として働き、
精巣では、ビタミンK2が少ないと男性ホルモンの量も低下していきます。

興味深いのは、癌への効果で、ビタミンK2はがん細胞へ自殺を働きかけます。
実際に肝がん患者に投与されてその有効性が確認されています。

納豆というご先祖様の知恵は、実にありがたいものですね(^^)


shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(2) 抗酸化ビタミン 

2007年10月23日

やっぱり納豆?

納豆というのは、いまさらですが非常に優れた食品だと思います。

私はどうも好きにはなれないので食べませんが、
女性にとっては食べないといけない食材の一つではないでしょうか。

一つは、ビタミンKに関することです。

ビタミンKは血液凝固にかかわるビタミンです。
ビタミンKがないと出血したときに血が固まりません。
そのほか骨粗鬆症にも関係している重要なビタミンです。

化粧品では、目のくまを軽減するとして、一時期流行ましたね。
いまはどうだかわかりませんが・・(^^;;

さて、ビタミンKは植物に含まれるビタミンK1と卵や肉、納豆に含まれる
ビタミンK2があります。

ここで重要なのが野菜由来のビタミンK1は吸収力が悪いということ。

さらに、細胞への効果についてもK2の方が2重結合が多いため、
細胞への効果もK1より高くなっています。

腸内細菌でもビタミンK2を作るので、以前はビタミンKの不足は
起こらないと考えられていましたが、腸内細菌が作るビタミンK2は
吸収されにくいので、やはり食事から摂取することが重要視されています。

ちなみにビタミンK2は、血液凝固因子ですが、
それより重要なのは骨粗鬆症と動脈硬化の予防です。

骨粗鬆症の治療薬としては、ビタミンK2が使用されるのですが、
ビタミンK2は分子の大きさによって細かく分類されます。

特に納豆に含まれるビタミンK2は骨代謝を調整するだけではなく、
骨組織に直接骨の形成を促したり、骨細胞のコラーゲン合成を促す特別なタイプです。

納豆を食べる習慣があるところとあまり食べない地域では
骨折の発生率が違うと言われていますが、納豆のビタミンK2は
骨の形成の治療薬に使われるくらいですから違ってきて当然なのかもしれません。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(3) 抗酸化ビタミン 

2007年10月21日

もっとよく知りたいビタミンE その6

ビタミンEより抗酸化力が強いという売り文句なのが、トコトリエノールです。

米、麦、パーム油などに含まれているビタミンEの同族体です。

高コレステロール血症患者に投与すると、
総コレステロールや悪玉コレステロール、中性脂肪の濃度が低下することや
心疾患予防などが注目されています。

こちらも動脈硬化への予防効果があるのですが、
単なる脂質の抗酸化だけではなく、白血球が血管にくっつかないように
する作用を持っています。

また、トコトリエノールはビタミンEと似たような化学構造を
持っているのですが、側鎖に2重結合がある分、
細胞膜での移動に優れており、ビタミンEよりすばやくラジカルを
捕捉できるという特徴があります。

ただ、ビタミンEに比べて供給量が少なく、
ヒトでの臨床例がまだまだこれらかといったところが課題でしょうか。

γタイプのビタミンEと同様に注目されている抗酸化素材です。




shin_chanz at 00:03|PermalinkComments(0) 抗酸化ビタミン 

2007年10月19日

もっとよく知りたいビタミンE その5

活性窒素酸化物、一酸化窒素や一酸化窒素ラジカルなどがありますが、
これらはマクロファージという免疫細胞によって作られます。

一酸化窒素は、酸素と窒素が一つずつくっついただけのものなのに
多彩な効果をもつ化学物質で、血流増加や神経伝達物質として働きます。

一酸化窒素を利用した薬品で一番有名なのは、ED治療に使われる
バイアグラでしょうか。

一酸化窒素による血管拡張はノーベル賞を受賞するほどの大発見でしたが、
過剰の一酸化窒素は様々な問題を引き起こします。

免疫細胞は、菌を殺すのに一酸化窒素を作るのですが、
これが体内でさらに酸化されて亜硝酸となっていきます。

亜硝酸は、2級アミンや2級アミドとくっついて、
ニトロソアミンとなるやっかいな物質。

よく、無農薬野菜や有機栽培の販売者は、
化学肥料のやりすぎによる葉野菜中の亜硝酸を問題にしますが、
癌学者などは免疫細胞が作る窒素酸化物由来の亜硝酸を問題にします。

ずいぶん前に野菜中の亜硝酸が問題になった時、
癌学者が食事から摂取する亜硝酸の量と体外へ排出する亜硝酸の量を
比べると、体外へ排出する量がとても多いことに気がつき、
食事由来より体内で発生している量がはるかに多い事実を突き止めました。

とくに炎症性疾患であると、尿へ大量の硝酸塩が排出されます。

この余計なNOを消去するのが、γタイプのビタミンEで
心疾患者において体内で発生するNO消去にγタイプのビタミンEが
実際に活躍していることが認められています。

なお、このγタイプのビタミンEですが、αタイプのビタミンEを
多く摂取すると、排出されやすくなるという問題があります。

γタイプのビタミンEは前立腺がんに対する予防効果も認められていますので、
単にαタイプのビタミンEをサプリメントで摂取しすぎると
せっかくのγタイプのビタミンEの効果がでませんので、
バランスよく摂取することが求められています。

まあ、γタイプを含んでいると安いですし、安くて効果があるので、
ビタミンEを摂るときには、αタイプだけでなく、γタイプがしっかり配合された
ものがよいでしょう。

shin_chanz at 00:12|PermalinkComments(0) 抗酸化ビタミン 

2007年10月18日

もっとよく知りたいビタミンE その4

ビタミンEですが、最近はγタイプのビタミンEを配合している
サプリメントも増えてきました。

以前の記事で、ビタミンEの価格について触れましたが、
γタイプのビタミンEは大豆油から大量生産されるため、
価格は安くなっています。

ビタミンEとしての栄養表示は、αタイプのみでしかできませんが、
γタイプは利尿ホルモンとして強力な作用をもつほか、
疫学調査からは、心筋梗塞などの予防はγタイプのビタミンEの
血中濃度とよい相関があることがわかっています。

つまり、γタイプのビタミンEは、肝臓からは輸送されにくいのですが、
それでもγタイプのビタミンEを摂る量が多いほど、
動脈硬化の予防効果が高いということです。

悪玉コレステロールの酸化についてもαタイプより
γタイプの方が強いことが動物実験でも証明されているのも大きいです。

動脈硬化への効果については、抗酸化作用だけではなく、
抗炎症作用を持ち合わせているのも大きいです。

炎症を起こす成分を作る酵素(シクロオキシゲネース2)を阻害
できるのはγタイプのみでαタイプには効果がありません。

さらに体内での抗酸化作用で最も注目すべきなのは、
活性窒素酸化物を消去できるということです。

体内で発生する酸化物には、活性酸素が有名ですが、
活性酸素並みに病気の原因となるのが、活性窒素酸化物です。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 抗酸化ビタミン 

2007年10月16日

もっとよく知りたいビタミンE その3

年をとると動脈硬化が問題になってきます。

子供と違って大人の血管は、長い年月血液を流しているため、
「質が悪い」血液の場合は、その血管の壁が硬くなり、ぶ厚くなって、
血管の柔軟性が損なわれていきます。

そうなると、心臓や脳といった重大な器官で、様々な障害が起こり、
重い病気へと突き進んでいくのですが、
動脈硬化が発生していない段階では、ビタミンEの摂取が
ある程度動脈硬化に予防効果があることがわかっています。

動脈硬化の原因は、悪玉コレステロール(低密度リポタンパク質)が原因と
聞いたことが多いかと思います。

悪玉コレステロールのなかで特に問題なのは酸化したものです。

食事したあと、脂肪は血管で運ばれて各細胞の栄養源となるはずなのですが、
その過程で酸化することもあります。
(人間の体にとって、酸化しやすい油というのは、非常に重要な働きをするので、
 避けていくわけにはいきません。)

外部から侵入してくる菌をやっつけたりする免疫細胞(マクロファージ)が
この酸化した悪玉コレステロールを食べると、
頭がおかしくなってしまうのでしょうか、悪玉コレステロールばかり
食べるようになります。

問題は、血管の内側で一箇所にとどまり、悪玉コレステロールばかり
食べるためにどんどん蓄積していきます。
コレステロールは固いため、沈着したところは硬くなります。

さらに酸化した悪玉コレステロールは、炎症の原因となるので、
細胞の分裂を促進します。

皮膚のように外へ向かって細胞分裂させていくならともかく、
血管のようにただでさえ細い管のなかで、血管を塞ぐように細胞が
分裂すると、血管の流れは悪くなり、細い毛細血管なら
あっけなく詰まってしまいます。

まずは、悪玉コレステロールの酸化を防ぐ必要があるのですが、
それがビタミンEというわけです。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 抗酸化ビタミン