2010年03月

2010年03月08日

香る素材

ニンニクというのは、興味深い食材で、お肉やご飯、パンにも合って和洋中問わず使われます。

ただし、問題は、食べた後、ニンニクの臭いがしてしまうこと。

しかも、口からだけではなく、全身からニンニクの臭いが発散します。

ニンニクは不思議な食材で、消化されると、その香りは血液を巡って皮膚から発散されるようになります。

皮膚から臭いが出てくるという食材は、他には無いと思います。

しかし、考えようによってはもしいい香りが皮膚から出てくるのでしたら、非常に面白いのではないか。

そうやって開発されたのが、「香るガム」です。

クラシエフーズから発売されていますが、ニンニクのように皮膚から発散する香り成分を研究して開発されたものです。

ただ、香りは一つの成分から成り立っているのは稀で、通常は非常に複雑な成分が重なり合って、一つの香りを作り上げています。
コーヒーなら900〜1000種類の芳香成分がひとつのコーヒーの香りを作り上げています。

そのため、皮膚から出てくるガスは芳香成分すべてではなく、限られた数しか出てこず、さらには出てきた成分が必ずしも心地よい芳香とは限らず、ニンニクのように臭い場合もあります。

体臭改善が目的なので、体臭がよりきつくなってしまっては元も子もありません。

ただ、香りが良い成分というのも限られています。

良い香りでもお菓子の香りでは、まるでおやつばかり食べているような印象を与えかねません。

しかも食べられるものでないと、意味は無く、そうすると合成香料は省かれ、天然精油、それも香りが良いハーブ系の精油に限られてきます。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 食品の科学 

2010年03月05日

毒が及ぼす場所・・

皮膚科領域でかつて使われていたのが、砒素。
和歌山毒物カレー事件でクローズアップされましたが、大量なら人を死に至らしめます。
しかし、砒素は薬にもなるということで、皮膚科では梅毒の治療薬として砒素化合物が使われていました。

大量なら毒と成る成分も少量なら医薬品にもなるということで、他にも多くの劇薬や毒薬が医薬品として用いられています。

また、こうした化学物質の毒性が強いからと言っても人間の細胞すべてに毒性を示すわけでもありません。

皮膚の細胞は頑強に抵抗するのに、臓器の細胞は逆に弱くやられてしまうという場合もあります。

つまり、どの臓器を標的に毒性を示すかを知ることで、危険な成分もある程度リスクを抑えながら使いこなすことも可能。

たとえばイソプロピルアルコール(IPA)という成分があります。
安い手洗い殺菌洗浄剤などに配合されている場合もありますが、この成分は水に溶けにくい成分の溶解性を高めたり、殺菌効果目的で配合されます。

特に殺菌効果はエタノールより強いというのが特徴。

皮膚に対してはさほど毒性が強くない成分で、皮膚に塗っても数秒で揮発してしまいます。
ただ、この成分は皮膚への毒性より、蒸気による毒性が強く、中枢神経系や腎臓を攻撃する特性があります。

化粧品での使用は問題ありませんが、この成分はペンキなどにも含まれ屋内作業でIPAを大量に使用する工場などでは気をつける必要があります。


shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 化粧品 

2010年03月03日

植物の産地 その3

たとえばソウハクヒという生薬があります。
育毛剤に良く使われますが、美白効果があるため、美白化粧品にも配合されます。
この生薬の有効成分のうち、美白成分については中国産より日本産の方に多く含まれています。
(ただ、ソウハクヒのメイン成分ではないため、ソウハクヒを漢方薬として使う分に効能効果はたいして変わりは無いと思います。)

ソウハクヒは日本産と微妙に種差があるのか、育つ地域によって微妙に成分含量が変わります。

化粧品に使われる薬用植物で、地域差が特に激しいのが前にご紹介したカンゾウとこのソウハクヒになります。

美白効果は定量的に判断できますので、種差による違いだけでなく栽培地域差も強く認識されています。

これが抗アレルギー効果や保湿になるとかなり曖昧になりますので、中国産だろうが日本産でもたいした違いはありません。

また、お茶の葉にはカテキンが20%前後含まれますが、このぐらい含有量が多いと地域よりむしろオーガニックだとか栽培方法による違いしか打ち出されていません。

お茶として飲むのでしたら宇治や静岡という名称があった方が美味しそうですが、エキスとして使う場合は、有効成分の濃度に効果は起因するため、産地はそれほど重要視はされないのです。

ただ、これがハーブになると、やはり産地というのは重要になります。
エッセンシャルオイルでも作り手や採れる地方で、香りが変化するためです。
天然植物である以上、同じハーブでも水のやり方や日照時間、寒暖によって成分が微妙に異なり、この微妙な違いでも人間の臭気は嗅ぎ分けることができるからです。

また、熟成具合によっても香りは変化し、植物エキスと香料では違った尺度で評価しなければなりません。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(0) 化粧品 

2010年03月01日

植物の産地 その2

植物の根、茎、葉を含めた生薬全草から取れる貴重な成分は全草の重量に比べるとごく僅かにしか含まれていません。

つまり、ほんの少量の成分を植物に作らせるために与える栄養分は非常に多く、しかも与えた栄養分はすべて利用されず吸収効率もさほど良くないため、過剰に与える必要があります。

これを無駄と考えるか、仕方ないと諦めるか。

今も盛んなのかわかりませんが、20年ほど前は器官培養といって、植物の細胞を培養して、有効成分を作り出すことに企業は情熱を燃やしていました。

有効成分は、全草で作られるわけではなく、特定の細胞で作られるのであれば、その細胞だけ取り出して、培養すれば有効成分を大量に作れるのではないかという論法です。

広大な畑を必要とせず、農薬も不要。肥料も不要。

清潔な環境下で有用成分を大量に作れます。

化粧品にも器官培養法で作られた成分が使われた時期もありました。
シコニンという美しい紫色の色素で、化粧水やメイク化粧品に使われます。

アルブチンもニチニチソウの細胞にハイドロキノンを加えることで、植物系アルブチンの製造も可能。

他にもいくつかあったような気がしますが、コスト面で難しく商業化まで至ったものはごくわずか。

薬用植物の場合、成分を単離して使うということは無く、漢方薬なら煮汁、化粧品ならエキスとして複雑な成分を一つの集合体として取り扱う傾向にあり、ピンポイントで有効成分を作り出す技術はあまり有難くないのかもしれません。

ちなみに生薬の世界では、日本産が異常に高く評価されています。
漢方薬は値段があってないような業界なので、値段も店によってばらばら。
経済的にゆとりがある層の利用が多いせいでしょうか。
薬効成分の含有量と漢方薬店の値づけはどうも別のようで、同じ日本産の中でも大和地方になると値段が跳ね上がります。


shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(3) 化粧品