ナノ化粧品の落とし穴 その２

乳液の粒子をナノ粒子化すると何となく吸収は良さそうに見えます。
しかしながら、安全性はどうなのか？

乳液の粒子というのは、油の周りを乳化剤が取り囲んでいる状態です。

よい例えではないですが、かぼちゃを油、にんじんを乳化剤とすると、
かぼちゃへにんじんが隙間無く突き刺さっているのが
乳化された油と乳化剤の関係です。

油の表面を水となじみがよい乳化剤が取り囲むことで
水に溶けない油が水へ溶けるようになります。

ここでかぼちゃに刺さっているにんじんを一本取り出して、
胴体を真っ二つへ輪切りにします。

そして切り口のサイズを計測すると、ニンジンの胴体の切断面の面積
すなわち断面積を計算することができます。

かぼちゃの表面にびっしり突き刺さっているニンジンを
全部取り出して、ニンジンの断面積の合計とかぼちゃの表面の
面積というのは、だいたい似たようなものになります。

さて、ナノ化した乳液を考えて見ましょう。

上で粒子の半径を１０分の１にするだけで、
粒子の表面積は１０倍になることを計算しました。

これはすなわち、表面についている乳化剤の量も
１０倍になるということを意味しています。

乳化する油のサイズを小さくしても、
乳化剤自体の大きさが変わらないため、
必要な乳化剤も粒子サイズが小さくなるにつれ
反比例して多くなるということです。

ナノは効果の強調が先行していますが、
こういった乳化剤の量が増えるという問題もあります。

＜＜乳化の新しい概念＞＞

ＶＣＨエマルジョンは、粒子が小さいことを特徴として
昨年発売されましたが、もうひとつの売り物が
ポリグリセリン脂肪酸エステルという乳化剤を採用し
使っている乳化剤の量が少ないことです。

乳化剤の量を少なくするには、どうしたらいいか。
油の表面にのみ乳化剤がくっついて、
油の中や水の中には溶け込まないというのが
理想的な乳化となります。

洗顔などでつかう石鹸は、薄めて泡立たせるときに
水の中には大量に溶け込んでいます。
洗顔時、汚れた皮脂が石鹸液へ入ると、
皮脂の表面に石鹸がつくことで、
水に溶けない皮脂を水へ溶けるようにします。

しかし、この状態では、石鹸は油の表面と
水の中に溶け込んだ２通りで存在しています。

水や油の中にも大量に溶け込む乳化剤なら、
油を乳化しようとすると乳化剤はたくさん必要となります。

つまり、水にも油にも溶けにくく、
水と油の境界線に存在しやすいものが
少ない量で油を乳化でき、理想的な乳化剤となります。

それが即ちポリグリセリン脂肪酸エステルという乳化剤です。
食品の乳化剤にも使われますが、化粧品にもよく使われます。

セテスー３０、ステアレスー２０のように名前のあとに
番号がつく成分がありますが、これらはエチレンオキサイド
というものをつけた乳化剤です。
（ＰＰＧ−○○なら、プロピレンオキサイドをつけたもの）

エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドをつけた
乳化剤が化粧品の乳化には一番よく使われますが、
これらは水にも油にも溶けやすいという欠点を持っています。

ポリグリセリン脂肪酸エステルは昔からある界面活性剤なのですが、
少し前にこの油にも水にも溶けにくいという面白い性質についての
論文が出て以来、急速に注目されるようになった乳化剤です。

乳化は、消費者のイメージでは、乳化剤は油の表面のみにしか
存在しないというものだと思いますが、実際には、水層や乳化した
油の中にもたくさん存在するものです。

乳化には、粒子の大きさから計算した必要な乳化剤の量だけでなく、
水や油に溶ける無駄な量も必要となるため、
なかなか必要最低限に抑えた乳化物を作るのが難しいのですが、
安全性を考えるなら乳化剤の量は少ない方がいいに決まっています。

ナノばかり強調して、たくさんの乳化剤を使用した
ナノ乳液や化粧水が増えてきていますが、
ナノではない昔の乳液などに比べて
とんでもない量の乳化剤を顔に塗ることになりますので、注意が必要です。

最後に、医薬品や健康食品ではナノ化することに大きな意味があります。
それは腸壁面との接触面積を増やして、吸収を改善することです。
粒子を小さくすればするほど、吸収効率は向上するので、
医薬品だけでなく健康食品にもナノ技術が使われるようになりました。

健康食品の場合は、肌に塗った使用感や何年も安定にナノ粒子として
水に溶けている必要がないため、安全なでんぷんなどを
利用してナノ粒子を作っています。
（トゥヴェール　ＣＯＱ１０サプリ）