発がん性物質

2007年08月24日

ニトロソアミン

トリエタノールアミンやジエタノールアミンの発がん性について
注意すべきはニトロソジエタノールアミンと書きました。

ただ、ニトロソアミンは、直接DNAに作用するわけではありません。

ニトロソアミンは、体内にある薬物代謝酵素チトクロムP−450によって
カルボニウムイオンという反応性の高い成分となり、
それがDNAと反応してDNAをアルキル化し、発がん性をもたらします。

つまり、発がん性を示すには、まず発がん性物質が
体内に入り、細胞内へ浸透する必要があります。
さらに細胞内で、酵素による修正を受けて、DNAがある核内に
存在しないといけません。また、存在しても周りのたんぱく質ではなく、
DNAにくっつく必要があります。

たとえ、DNAをアルキル化しておかしなDNAにしても
細胞機能に変化が起こり、生き残る確率が少なくなります。
また、生き残ってもおかしな細胞には自殺するメカニズムが備わっています。

自殺するメカニズムが働かなくても、NK細胞など、癌化した細胞を攻撃する
細胞が排除に取り掛かります。

発がん性といっても、そんな簡単に癌になるわけでもないのです。

とくに一番最初のP−450の酵素活性には、人によってかなり違います。
タバコなど良く吸っている人はこの酵素の活性が強くなります。

ちなみに直接癌化する化学物質は、それほど多くありません。
それは、そんな強い化学反応を起こすものは、周囲の物質と反応して
他のものに変化するためです。

身の回りにある化学物質はチトクロムP−450などの酵素により
はじめて活性化して、周囲のたんぱく質などと反応するようになります。
癌化されるかどうかは、上に書いたとおり、運悪く、活性化して
反応性が高くなったものが、細胞核内のDNAと反応した場合です。


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2007年08月21日

トリエタノールアミンが人気なので 2

トリエタノールアミンの毒性研究しているFDAの報告によると
1977年に化粧品中のニトロソジエタノールアミンの量を測定すると、
32の試料から31%の割合で検出されニトロソジエタノールアミンとして
35−1300000ppbの割合で検出されています。

1992年なら、12の試料から67%確立で210−2960ppb
検出されています。

検査する試料が減っているのは、かつてニトロソアミンが入っていることが
問題になり、それを調査すると防腐剤が原因となっていたことが
わかったからです。

その防腐剤は、日本では許可されていませんが、
アメリカでは今なお使用されているため、その防腐剤を配合している
化粧品を中心として調査を進めています。

ちなみにニトロソジエタノールアミンというのは、
亜硝酸とジエタノールアミンが反応して出来るものです。
一度くっつくと簡単に離れません。

亜硝酸とトリエタノールアミンは反応するのですが、中和反応のため、
亜硝酸とくっついてもアルカリ側になると離れてしまいます。
しかも、亜硝酸の水溶性を高めるため、トリエタノーアミン亜硝酸塩の場合は、
亜硝酸の排出を体の中から高める可能性があります。

亜硝酸とトリエタノールアミンがくっつくのは、かなりの高温でないと
いけないため、常温では中和反応しか起きないと考えるのが妥当でしょう。

モノエタノールアミンの場合は、亜硝酸とくっついて、
ニトロソモノエタノールアミンが出来ますが、
この化合物は不安定なため、すぐに壊れてしまいます。

ジエタノールアミンもモノエタノールアミンもそれぞれニトロソ化が
簡単に起こるのではなく、常温ならジエタノールアミン亜硝酸塩や
モノエタノールアミン亜硝酸塩になる割合も多くなります。

たとえば、自動車の排ガスでNOXというものがあります。
一酸窒素や二酸化窒素、三酸化窒素・・などです。
自動車の燃料はガソリンだけで、これは炭素の塊です。
燃えても、一酸化炭素か二酸化炭素になるだけですが、
実際はNOXも放出されます。

それはなぜかというと、通常は窒素と酸素は反応せず混ざっているだけです。
それが、エンジン内は高温のため、ピストンで圧縮されると
窒素も酸素とくっついてしまいNOXに変化するからです。

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2007年08月19日

トリエタノールアミンが人気なので 1

トリエタノールアミンの毒性でこちらに飛んでくる方も多いので、
もうちょっと付け加えます。

トリエタノールアミンは発がん性があると主張する方も多いのですが、
それはかつてのFDAの報告にあります。

ただ、この報告を読んでみると、トリエタノールアミンではなく、
トリエタノールアミンに微量含まれているジエタノールアミンが
亜硝酸と反応して出来るニトロソジエタノールアミンを問題にしています。

ところがなぜかトリエタノールアミンが問題とする主張も多い。

モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンは、
それぞれアンモニアに酸化エチレンをくっつけて作ります。

モノエタノールアミンなら、酸化エチレンは1つ、
ジエタノールアミンなら2つ、トリエタノールアミンは3つです。

それじゃ、4つはないのかというと・・・、ありません。

それは、反応しないからです。

これが重要なんです。

トリエタノールアミンになると、それ以上はよほど特別なものでないと
反応しにくくなります。
つまり、それなりに安定だということ。

逆にモノエタノールアミンは、他のものとくっつくための手が2つ、
ジエタノールアミンは1つ余っています。

つまり、こちらの両者は「別の何か」に変わる余地があるということです。

ちなみに人間様はエタノールアミンと関係ないかというと、
そんなことはありません。

人間の体でも、大量にエタノールアミンが作られています。

工業的には酸化エチレンが使われますが、人間様は酵素で楽に作ります。

ちなみにモノエタノールアミンは、非常に強いアンモニア臭がありますが、
これがジエタノールアミン、トリエタノールアミンになるに従い
匂いが減っていきます。
とくにトリエタノールアミンになるとほとんど臭いがなくなるため、
化粧品に良く使われます。

shin_chanz at 09:48|PermalinkComments(0)

2006年11月30日

化粧品の発がん性物質

化粧品の発がん性物質で有名なものは、ニトロソアミンでしょうか。

シャンプーに入っているジエタノールアミンが亜硝酸と反応してできる
ニトロソアミンがよく問題にされます。

染毛剤に含まれる色素にも不純物としてニトロソアミンが
入ることもあるようです。

ただ、ニトロソジエタノールアミンの発がん性は、
IARCの分類では2Bでかなり低いものです。

一番強いのがグループ1でその次がグループ2A、
そしてその次がグループ2Bとなります。

グループ2Aには、ディーゼルの排ガスやエステの日焼けランプがあり、
グループ2Bにはコーヒーや漬物(日本でも漬物を多く食べる地域は
癌死が多いです)、ガソリンやガソリンでの排ガスなどがあります。

FDAの1991年の調査ではコカミドDEAを使った市販品 8個のうち63%
1992年の調査ではコカミドDEAを使った市販品12個のうち67%に
存在が確認されています。

もともと1970年代の調査でニトロソアミンが化粧品に入っていることが
確認されたのですが、その後どうしてニトロソアミンが化粧品にはいるのかという
徹底した調査で、ブロノポールという防腐剤が分解して、
亜硝酸を生成することがわかりました。

この防腐剤とトリエタノールアミン(ジエタノールアミンを少量含む)を
配合するとニトロソジエタノールアミンが生成することが確認されています。

このブロノポールは、日本では使用禁止となっていますが、
いまでもアメリカの化粧品には配合されることがあります。
FDAの調査もこのブロノポールを配合した商品を中心に調べましたので、
ニトロソアミンの検出割合が高くなっています。

なお、亜硝酸と反応してニトロソアミンになりやすいのは、
ジエタノールアミンで、シャンプーの成分にも使われています。
ただ、この成分は、日本の店頭で販売されているシャンプーからは
ほぼ排除されています。

他にもニトロソアミンになりやすいのは、二級アミン、三級アミン、
二級アミド、三級アミドと化粧品の教科書には書いていますが、
厳密に見ていくと敏感肌向けメーカーが売り物にする成分が相当します。

(公共の図書館には化学大辞典というものがありますので、そこでアミンを
 調べてみれば、特に二級アミン(ジエタノールアミン)がニトロソ化
 されやすいことがわかります)

ですので、無難な「ジエタノールアミン」や「トリエタノールアミン」が
危険だと定義されることが多いです。

ただ、化粧品のニトロソアミンより、焼き魚と大根おろしから
作られるニトロソアミンの方がIARCの分類では発がん性が上になります。

ニトロソアミンの発がん性が強調されることもありますが、
癌の専門家からみれば、コーヒーや漬物と同程度となります。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(4)

2006年11月29日

いわゆる発がん性物質

発ガン性物質と呼ばれるのは、いっぱいあります。

ただし、実際にヒトに対して、発がん性を示すものは、
何千、何万とあるわけではありません。

その割りに色々発がん性が言われるのは、
何か売りつけようとする商売熱心な人が多いからだと思っています。

発がん性を確定するのは、基本的に政府系の研究機関によります。
長期の動物実験やヒトでの健康調査で確定します。
発がん性が確定すると、産業界にかなりの影響がありますので、
慎重に行われます。

世界保健機構には有名な癌の研究機関があって、
その中でダイオキシンと同列に並べられている発がん性物質は、
タバコやヒ素、太陽光、経口避妊薬、ホルムアルデヒド、アルコール飲料、
ベンゼン、アスベスト、おがくずがあります。

意外と自然に存在するものも発がん性を示すものがあります。

タバコや太陽光、アスベストはいまさらといった感じでしょうか。
アルコールも飲みすぎると肝臓がんにならなくても
肝硬変となることもあります。

ホルムアルデヒドは、シックハウスの原因物質ですが、
アメリカや外国の化粧品の防腐剤として使われます。
ただ、ホルムアルデヒドは鼻の中に滞留して、鼻腔癌を引き起こしますので、
化粧品に使われている場合は、さほど問題が少ないかもしれません。

ベンゼンは、化粧品メーカーのDHCが製造した健康食品から
検出されて、最近、問題になったものです。
ビタミンCと保存料の安息香酸が反応して生成します。
ベンゼンは発がん性の他、骨髄も破壊します。

ところで、おがくずに驚かれる方が多いのではないでしょうか。

植物だし、自然で安心安全というイメージがありますが、
意外と発がん性があります。
家具職人など、木粉を吸ったり、触れたりする職業では、
癌にかかるひとが昔から多くいました。

まあ、自然なものだから安心できるというわけではありません。
あまり自然に触れすぎるのも良くないのでしょうか・・(^^;;

また、近頃では農薬の代わりに木酢液を使う農業が増えてきました。

木材を焼いたときにでる煙を原料にしたのが木酢液で、
自然なイメージで無農薬農法に取り入れられることもあります。
木酢にはホルムアルデヒドをはじめ、ベンゼン系、タール系の成分が
たっぷり含まれています。

動物実験で発がん性がないとされた農薬を避けて、
発がん性の疑いがある木酢液を使うのはなんとも皮肉なことです。

近頃では、精製してホルムアルデヒドを抜いた
木酢液も出回っているようですが、
なぜ、アトピーのような皮膚の弱い方に限って、
刺激も毒性も高そうな木酢を体に塗りつけるのか、残念でなりません。

shin_chanz at 00:01|PermalinkComments(8)