界面活性剤

2010年09月24日

石鹸の酸化

石鹸が酸化しにくい状態というのは、遊離の脂肪酸が無い状態です。

石鹸の酸化反応は、石鹸の状態より遊離の脂肪酸の状態の方が圧倒的に早く進みます。

つまり、脂肪酸と同じ分量のアルカリで作った石鹸の方が酸化されにくくなります。

ただ、洗顔に使う化粧石鹸は、泡立ちや泡のキメ重視で過剰の遊離脂肪酸が入っている状態です。この場合は、酸化しにくいラウリン酸やミリスチン酸等を使用するのが一般的で、またキレート剤が配合されているため、酸化も進みにくいのが特徴です。

遊離の脂肪酸があると、石鹸自体の刺激も低減できることから好んで配合されていますが、キレート剤が入っていないのに遊離脂肪酸を増やすと確実に着色の原因となります。

そのため、無添加石鹸メーカーの石鹸ではアルカリを若干過剰として石鹸を作っています。ここが無添加石鹸メーカーと化粧品メーカーの石鹸での相違点となります。

手作り石鹸の場合は、脂肪酸を残し気味で、石鹸を作るために遊離のアルカリは無く、着色しやすくなります。

手作り石鹸もコールドプロセスではなく、遊離アルカリを除去する工程のある塩析法で作れば、酸化しにくい石鹸を作ることも可能ですが、手間がかかりすぎて、難しいため、ほとんど行われていないのではないでしょうか。

後、もう一つの対策が石鹸中の水分を減らすこと。
石鹸にはだいたい15%前後の水分が含まれていますが、これを少し減らすと酸化しにくくなります。ただし、少なすぎると割れてしまうため、加減が難しく工場で石鹸を作る場合ならともかく、手作り石鹸では水分調整は難しいというより出来ないかもしれません。

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2010年09月23日

石鹸の酸化

手作りで石鹸を作られた方は経験されることが多いと思いますが、石鹸の酸化というのは、無添加石鹸において避けることはできません。

市販のものでも無添加石鹸というものが作られていますが、ポイントは石鹸を構成する脂肪酸を如何に酸化しにくいものを使用するかに尽きると思います。

石鹸はラウリン酸やミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸のような飽和脂肪酸のほかに、オレイン酸、リノール酸、パルミトオレイン酸のような不飽和脂肪酸から成り立っています。

この脂肪酸の中で酸化されやすいというのは、不飽和脂肪酸。
非常に反応性が高くて、空気中の酸素とくっつこうとしています。

つまり、不飽和脂肪酸をできるだけ入らないようにすれば、無添加であっても酸化しにくい石鹸となります。

ここが一番大事なポイントで、不飽和脂肪酸が入っているのに酸化しないよう努力するのは大変で、いわゆるEDTAのようなキレート剤を必要とします。

石鹸を作るときには油脂由来の鉄や銅などの微量金属が混入し、これが石鹸の酸化進行を加速させます。

キレート剤は金属にとりつくと、金属が悪さできないようにするため、石鹸の白さは常に保たれたままとなります。
ただ、キレート剤は金属のイオンを無力化するだけで、酸化防止剤としての効果はなく、いずれ石鹸は酸化されて、着色するようになります。

問題は、この着色が一様に起こらないことで、斑点のようなシミが出現したり、色々な酸化の形態をとっていきます。

常温で固化しているようなオイルより液状のオイルを使用した方がこういった酸化は起こりやすくなります。

酸化すると、変色するのも問題ですが、臭気も変化し、せっかくの香りが重たい香りへと変化することもあります。

原料の脂肪酸にも気をつける必要がありますが、酸化しにくい状態へおいておく必要もあります。


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2010年09月21日

界面活性剤は体内で分解される?

植物原料を使った界面活性剤の場合は、体内で分解されることも想像に難しくないと思います。

それでは合成系の界面活性剤の場合は?
様々な研究データがあるのですが、ねずみや犬だけでなく
人間を使ったデータも公表されています。
アメリカ軍が何の研究目的はわかりませんが、データを収集しています。
また、水資源が乏しく、下水を飲むしかない閉鎖的な町のデータ
(下水に含まれる洗剤を微量飲む必要がある)など、
様々なデータが収集されています。

アメリカ軍のデータでは、放射能を放出する炭素を利用して
界面活性剤を合成していて、どの臓器に放射能が分布していき、
排出するかを見ています。

その結果では腸や膀胱を通しての排出以外にも肺からの排出も結構あります。
つまり、合成界面活性剤は飲み込んでも大部分は便として排出されますが、
体内に入ったものは、尿として、そして分解された上で呼気ガスからも排出されます。

臓器への蓄積性があるかといえば、実際にはありません。
油に溶け易い界面活性剤が、脂肪組織に蓄えられるということはなく、
体内で分解・排出されます。
それは、界面活性剤の油に溶ける部分は植物油を原料にしていることが多く、
体内でも分解する回路が備わっているからです。

また、シャンプーに良く使われる硫酸エステル系の界面活性剤になると、
皮膚浸透性は乳化剤に比べて、悪くなります。タンパク質へくっつく性質があり、
皮膚表面のタンパク質へ結合するため、皮膚内への浸透が進まないためです。
飲み薬にも硫酸エステル系界面活性剤は使われますが、
腸からの吸収はほとんどなく、腸のタンパク質と結合して、
そのまま排出されていきます。

意外と蓄積せず分解されたり、排出されるのは植物起源の炭素骨格を持っているからです。

ただ、ここに塩素やフッ素のようはハロゲン元素が入ってくると、
大きく様変わりして脂肪組織に蓄積されるだけでなく、様々な問題を引き起こします。
近年では液晶テレビ製造に使われるフッ素系界面活性剤が、
アメリカの国立公園の野生動物から検出され、この界面活性剤の製造が
世界的に禁止もしくは自粛されはじめています。

化粧品では使われないものの、産業用として使われるものがあり、
それがどういうわけか野生動物の体内で濃縮されていたので、問題となりました。
基本的にこのような界面活性剤は化粧品に使われることは無いので、
ヒトには問題ないと思います。

なお、フッ素系界面活性剤の奥深さは、人工血液にもなるところで、
他の界面活性剤では絶対に人工血液にはなりませんが、
血液の代替品にもなるという点は評価に値すると思います。

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2010年09月17日

界面活性剤は体内で分解される?

100%食品由来だと分解しやすいと考えられます。

界面活性剤は色々あり、油に溶ける界面活性剤では、グリセリン脂肪酸エステルというものもあります。こちらもスキンケアクリームには使われます。
主に食品用での用途もあり、でんぷんの老化防止として有用なものです。
無添加だとでんぷんの老化により数日で硬くなってしまうパンが、2,3日程度老化を遅らせる特徴があります。

作り方は油と油の2倍量のグリセリンを高温で混ぜると出来上がり。
あとは真空で加熱すれば、必要な成分のみを取り出します。
もともと自然界には存在する界面活性剤で、油を吸収する際に出来るものです。

それほど強い乳化力があるわけではありません。ただ、食べても油脂同様に消化吸収れていくため、安全性は高くなっています。

食品成分からつくる乳化剤は色々あって、糖と油脂を反応するものもかなりの数が存在します。

界面活性剤というのは、水と油に溶けるそれぞれの部分から成り立っています。

油に溶ける部分というのは、コストから言って椰子油やパーム油から採れる脂肪酸を使うことがほとんどです。
たまに牛脂などもありますが、ほかの油脂を使うというのは余りありません。

むしろ変化に富むのは水に溶ける部分です。
水に溶ける部分を色々変えることで、界面活性剤の性質を大きく変えることが出来ます。

食品由来といえば、砂糖やブドウ糖、でんぷんなどの炭水化物、アミノ酸やタンパク質、グリセリンなどが多くあります。

砂糖から作った界面活性剤は食品に使われますが、こちらも体内で分解されて砂糖と脂肪に分かれて、それぞれ吸収されていきます。
刺激性も低く安全性は高いのですが、泡立ちなどは弱く、化粧品より主にお菓子などの食品作りに使用されています。

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2010年09月15日

界面活性剤は体内で分解される?

通常は、石鹸のように界面活性剤を作るときはオイルを分解して作ります。

食品分野で使われる界面活性剤の場合、よく使用されるのが食品由来のものや原料にしたものです。

大豆から採れるレシチンは良く使われます。
こちらの場合は、チョコレートには製造時に粘度を落として加工しやすく、そして舌触りを改良するために使われます。
もともと大豆に含まれる成分ですから、たべても害はありません。
むしろ栄養となるぐらいです。

ただ、レシチンには問題がひとつ。それは酸化されやすいという点で、酸化すると異臭がします。
食品のように賞味期限が短いと別ですが、常温保存が前提の化粧品には使いづらく、レシチンの中の脂肪酸を酸化されないように水素を付加して、酸化されにくい脂肪酸へと加工します。
ただ、この場合、新規の合成界面活性剤というより、脂肪酸組成をリノール酸からステアリン酸に変えるため、天然に存在するレシチンと変わりません。
(水素添加は植物油からマーガリンや口どけの良い油を作るときに使われます。)

つまり、天然のレシチンは酸化されやすい脂肪酸からなるものと酸化しにくい脂肪酸からなるものが混在していますが、水素添加することで、酸化しにくい脂肪酸のみに組み替えることが出来ます。

化粧品で使われるのは、主に水添レシチンで特有の使用感があり、これが好まれることから多くの化粧品に使われています。

面白いのはレシチン自体が保湿効果を持つことで、保湿と乳化を兼ね備えた乳化剤のため、クリームに採用するメーカーも少なくありません。

レシチンなら、基本的に食べても栄養分となるだけで、チョコレートをはじめとして多くの加工食品に使われており、問題ない成分と思われます。


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2010年09月13日

界面活性剤は体内で分解される?

界面活性剤は体内で分解されると思いますか?
それとも分解されない?

そもそも合成界面活性剤は分解されないのか。

界面活性剤への批判に体内で分解されない、または蓄積されるというものがあります。
この主張については、申し訳ないのですが勉強不足としか言いようがありません。

理由は界面活性剤は何千という種類があり、一概にすべてだめとはいえないこと、
そもそも多くのものは蓄積しないというデータはきっちりあるのに何故そのデータは無視するのかという点。

怪しげな化粧品会社というのは、売りたいために無理な主張をするところも少なくありません。
一番の差別化は界面活性剤を悪者にするかどうかというところです。

もちろん肌に刺激が強いものを使っているところもあり、
疑問を持つような界面活性剤もあります。

ちなみに界面活性剤は大きく、洗浄用とオイルを水に溶かすだけの乳化用の2種類があります。
この二つの違いは、分子バランスで決まります。

油に溶ける部分はそこそこで水に溶ける部分が大きい場合は洗浄用、逆に油に溶ける部分が大きくて水に溶ける部分が
小さいものは乳化用です。

簡単にはこうして分類していくことができますが、中にはそれに当てはまらないものもあります。

化粧水にたまに使用されるひまし油系界面活性剤がそうです。
ひまし油系はオイルそのものを乳化剤として使います。
そして水に溶ける部分もとても大きく、それでいて洗浄力はありません。

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2010年02月24日

化学物質を規制する法律が変わります

急に経済産業省が始めた化学物質審査規制法の改正。

一般の方にはあまり関係なさそうな感じのものですが、事業所には大いに関係あります。

元々化学物質審査規正法というのは、水俣病など化学物質によって引き起こされる公害病が立て続けに発生したことから、毒性のある化学物質の生産を規制したり、生分解性の悪い化学物質の流通を阻止するため作られたものです。

新たに開発する化学物質は、原則化審法による審査が義務付けられています。

生分解性の試験を行って、動物実験で安全性を確認して・・という手順を踏んで生物の中で濃縮性が無いかとか、環境に放出されても大丈夫かとか色々審査されます。

すべての試験を行うと、数億円程度の費用が必要で、これがネックとなりそう簡単には新奇の化学物質というのは出来ません。

基本的には非常に毒性の強い物質だけ規制していたものが、今度の改正で毒性が低くても環境に放出される量が多ければ、注意の必要な物質に指定されることになりました。

台所洗剤に使われるような合成界面活性剤も良生分解性という注釈が付きながらもいくつか指定されています。

今回の改正で、環境に対する影響を少なくするために制定された法律であることが明確になりました。

ただ、化学物質を扱っている事業所からどれだけのものを作ったとか、輸入したとかそういった報告が物質ごとにこと細かく経済産業省へ報告がいくことになります。

法律の趣旨はよくわかるのですが、何故この公務員改革を行おうとしていたときにやるのか、不思議でなりません。

基本的に経済産業省の定義する化学物質は、自然に存在するもの以外で、人間が反応して作るものとなります。天然油脂は化審法の対象外ですが、それから石鹸や合成洗剤を作れば化学物質となり、報告義務が生じます。

ものすごい量の事務量になり、この事務を捌いていくために公務員がわんさと増えて・・。

さて、省庁というのは、それぞれが独自に法律を定めて化学物質を管理しており、たとえば石鹸は体に使うものは薬事法で厚生労働省の管轄です。

では雑貨の石鹸はどこが管轄しているかご存知でしょうか?

実は、経済産業省の管轄となります。一応品質についての規格などもあります。

薬事法は結構厳しいので、化粧石鹸の品質表示などの取り締まりは良くされているのですが、雑貨で販売されている石鹸の取締りを経済産業省がしっかり監視しているという話は聞いたことがありません。

というか、やってなさそうな感じですが・・・。

省庁があるだけ、化学物質を規制する法律もそれぞれの管轄毎にあり、一元的に管理するような法律があっても良いような気がします。



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2009年10月02日

アタックNEO

いろんなところでキャンペーンをやっていますので、使ってみました。

汚れ落ちもなかなかなもので、まあ、仕上がりもまずまずではないでしょうか。

さて、洗剤の歴史を見ると、泡が少ない液体洗剤というのが登場したのは、約20年前。

ただ、そのときは泡立ちが悪く、洗濯=泡という概念が根強く、
結局、泡が立たない洗剤は失敗に終わっています。

今回、再挑戦するNEOの売れ行きに各社注目しています。

ちなみにすすぎが1回で出来るというのは、なんだか不思議なような気がしますが、
レストランで使われている業務用自動食器洗浄機用の世界では、特に難しい技術でもありません。

あの機械では、厨房に集められた食器をすぐに洗って、使えるようにするために
1分程度で洗浄を完了し、すすぎもすぐに終えなければなりません。

しかも自動食器洗浄機では強い圧力で水を皿やコップに当てて、
汚れを剥がしていきます。

泡が立つと泡がクッションになり、水で汚れを削ぐ力が落ちて、
洗浄力に影響するため、特殊な界面活性剤が使われていました。

アタックNEOはどうやらその界面活性剤を応用して作られているようです。

通常、台所洗剤や洗濯洗剤の主剤にはポリオキシエチレンラウリルエーテルという
界面活性剤が使われるのですが、これだと泡切れが悪くしかもこれ単体だと
冷たい水に溶けにくいという問題があります。

特に北海道での使用を想定すると、かなり低温の水にも溶けて洗浄力を
発揮しなければならないという問題に直面するのですが、
冷たい水に溶け残し無しで溶かすというのは難しいです。

粉石鹸では必ず溶け残りが発生します。

前述の界面活性剤では、そもそも原料そのものが冷水には溶けにくいため、
水にすんなり溶けるような配合が必要となり、副材料も多くなります。

しかし、原料そのものが冷水に溶けやすいものなら、
副材料も少なく済み、しかもすすぎの水が節約できるというメリットがあります。

ただ、この場合、洗濯時の泡立ちが悪くなるため、使っている人にとっては
(泡立ちが少ないため)本当に洗濯できているのか不安があり、ここが普及のネックになっていました。

この点を節水という新たな視点を加えて、クリアできたのは大きいと思います。

通常、洗濯にかかるコストは、洗剤代より水道代の方が高いので、
節水は洗濯代のコストダウンにつながります。

また、粉末洗剤や粉末石鹸を作る設備というのは、非常に大きくて、ビル並みの大きなドライヤー設備を用いて、水分を蒸発させ、洗剤を粉末化していきます。

液体洗剤はこういった大掛かりな設備が必要なく(原料を混ぜるだけの釜があればいい)、水分を蒸発させるための重油も必要でないため、CO2削減にも大きなメリットを生み出します。

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2009年03月27日

石油会社が作った界面活性剤

石油会社は微生物系界面活性剤に極めて関心を高く寄せていると書きました。

進化により生物が獲得した無駄が無く、驚異的な性能に引かれ、
石油の採掘や輸送に多大なコスト減少を期待するだけでなく、
石油会社のもうひとつの悩みを解消するためにも微生物系界面活性剤の
開発に勤しんでいました。

それは、石油が漏れたときに引き起こす環境汚染対策です。

日本でもナホトカ号による重油漏れは記憶に新しいと思います。
石油が漏れると、様々な難分解性であり、毒性の強い化学物質が環境に漏れ出す為、
大きな損害は避けられません。

そのため、石油会社は、漏れ出した石油をいかに回収するかということや
浄化するということは常に考えなければならないことで、
石油を食べて、他の安全な物質に転換する微生物の研究には多額の費用が投じられました。

実際、石油を食べる微生物は、アラスカでの原油漏れ事故の際に投入されています。
石油を食べることで、界面活性剤を作り出し、その界面活性剤が原油を
水へ溶かして、さらなる生分解を促していく。

まあ、環境中に今までいなかった微生物が投入される為、賛否両論はありますが、
ただ、石油がもたらす害は早い段階で減らすことが出来ます。
とくに原油の中でもほとんど蒸発しない成分に対しては、微生物剤がかなり有効だとされています。

原油漏れではなくても、タンカーの船底から原油を回収する際にも
微生物を注入して、ほとんどの原油を回収したりと、
ポンプでは汲めなくなった油田から原油を回収する為に見つけ出された微生物だけ
あって、油の回収については、どんな合成界面活性剤より、優れた効果を発揮しています。

自然の中に答えがちゃんとあるというのも面白いですよね。


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2009年03月25日

微生物が作る天然系界面活性剤 その2

微生物が作る天然系界面活性剤に注目したのは石油会社でした。

石油会社は、様々な合成界面活性剤を作る企業です。
それがなぜ天然系界面活性剤に注目したのか。

それは自然界における進化の知恵というべきでしょうか、
天然系界面活性剤は特殊な構造を持つものが多く、合成界面活性剤を性能的に上回るものが数多く存在します。

複雑で立体的な構造を持ちながら、無駄がなく、なにより完全に生分解され、
界面活性効果を示すのも石鹸や合成洗剤よりはるかに低い濃度(使用量)で
効果を発揮し、しかも合成界面活性剤ではありえないような作用を発現します。

何億年もの進化の過程において、無駄の無い構造に落ち着いたためでしょうか、
その性能に気がついた石油会社が膨大な費用を使って、微生物系界面活性剤の探索に乗り出しました。

石油は、地中奥深くに溜まっているものですが、驚くことに石油を餌にして生きている微生物も存在します。

油田の鉱床の奥深くに生息する微生物は、天然系界面活性剤を作り、自分の体の中に
石油を取り込み、分解して生きながらえています。
その中に原油の粘度を下げるものがありました。

さらに調べると微生物が作る天然系界面活性剤は、その特殊な構造からドロドロの
石油の粘度を劇的に下げることが出来るものがいくつも見つかっていきます。
この性能は大変有益で、何百キロものパイプライン輸送を可能にします。

つまり、石油を取り出すときやパイプライン輸送の際に、いかにコストをかけずに輸送するということが、重要となるのですが、その際に利用を検討されたのが、界面活性剤でした。

今では、ポリマー系など様々な石油の減粘剤がありますが、天然系界面活性剤もその減粘効果では他に負けてはいません。

ただ、天然系界面活性剤の問題は、その製造コスト。
天然油脂とアミノ酸や糖を発酵タンクに入れて製造しますが、入れた原料がすべて界面活性剤に変わるわけではなく、生産物の量が限られるため、どうしても製造コストが高くなります。
微生物による界面活性剤の生産はあくまで副次的で、界面活性剤を作るために生きているわけではありませんからね。

そのため、微生物が作る界面活性剤の普及には価格という大きな障害がありました。

近年の技術革新により、この価格という壁を残りえたものもあります。

サラヤの自動食器洗浄器用の洗剤で、エコウォッシュが微生物系の界面活性剤を使用しています。
酵母を利用し、糖とパームフルーツオイルを使用して、界面活性剤を合成します。

エコウオッシュは、発酵技術の進歩により低コストで微生物系界面活性剤を普及させた初めての商品となります。

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